加計学園の獣医学部新設をめぐる首相秘書官との面会記録の存在が明るみに出たものの、安倍晋三首相は2018年4月11日の衆院予算委員会で行われた集中審議で文書に関するコメントを避け続け、事実上「ゼロ回答」だった。
面会記録の存在を認めた愛媛県の中村時広知事は「出席したものの報告のために記述したというのは間違いない」などと信ぴょう性を強調する一方で、安倍氏は面会を否定する秘書官のコメントを引用するばかり。そんな中で、質問に立った希望の玉木雄一郎代表は安倍氏について「(面会記録は)答弁はウソだと言うことを示唆している」「ウソをついているかも知れないと思って質問するのは残念」などと批判。「ウソつき」呼ばわりに腹を据えかねたのか、安倍氏が「ウソつきと言う以上は、明確に証拠を示していただかなければ」などと反発する場面もあった。
面会記録正しければ「計画知ったのは17年1月20日」が破綻
朝日新聞が2018年4月10日、加計学園の獣医学部設置が「首相案件」だと記された首相補佐官との面会記録を愛媛県職員が作成していたことを報じ、愛媛県の中村知事は同日夕方の記者会見で存在を認めた。朝日は会見後、面会記録の全文をウェブサイトで公開した。その中には
「加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」
という記述がある。安倍晋三首相と加計孝太郎理事長が会食した場で、加計学園の獣医学部設置が話題に出たと読み取れる内容だ。この文書によると、面会があったのは2015年4月2日。過去の国会答弁では、安倍氏が初めて加計学園の設置構想を知ったのは17年1月20日だと説明していた。仮に面会記録の内容が正しければ、安倍氏は新設計画を15年4月以前に把握していたことになる。
面会記録が「答弁はウソだと言うことを示唆しているんですよ、これは!」
18年4月11日の集中審議では、野党はこの点を中心に追及を試みたが、安倍氏は面会記録について「コメントを控えたい」を連発。獣医学部の構想を知ったのは「17年1月20日」だと繰り返し、
「会食の際、獣医学部について話をしたことはない」
「加計さんから獣医学部の新設について相談や依頼があったことは一切ない」
などと従来と同様の主張を展開した。
こういった発言は玉木氏への答弁の中でも繰り返され、
「これ、ちゃんと愛媛県では、知事がちゃんと会見して、ここにあることは本物だと言っているんですよ?こういうことも事細かく詳細に書かれている。つまり、安倍総理の言っている答弁はウソだと言うことを示唆しているんですよ、これは!」
などと業を煮やした。面会記録に名前があった柳瀬唯夫首相秘書官(当時)らの証人喚問を求めた上で、こう続けた。
「総理、こんなことをしているとですね、内閣総理大臣自身を証人喚問に呼ばざるを得なくなりますよ?だって私ね、残念ですよ。一国の総理大臣とこうやって(質疑を)やっている時にね、私の目の前に座っている内閣総理大臣がウソをついているかも知れないと思って質問するのは残念ですよ、そりゃ。でも、そういう疑惑・疑念を持たざるを得ないのが今の現状じゃないですか、皆さん?」
若い時でも「ウソつき呼ばわりということはめったにしませんでしたから」
この直後に話題は加計学園から森友学園に移ったが、安倍氏は「ウソ」という単語に腹を据えかねたのか、発言を求められてもないのに「答弁する前に...」と切り出し、反論を展開した。
「私に対して『ウソつき』ということを明確におっしゃった。ウソつきと言う以上は、それは明確に私がウソをついているという証拠を示していただかなければいけない、こう思うわけでありまして...。私もですね、今まで若い議員の時にですね、色んな言い方をしましたが、ウソつき呼ばわりということはめったにしませんでしたから、その辺はですね、少しわきまえていただきたい」