学校法人「加計学園」が新設した獣医学部をめぐり、新たな展開だ。愛媛県や今治市、学園幹部らが2015年4月に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会した際、愛媛県が作成したとされる面会記録の存在を朝日新聞が報じ、愛媛県の中村時広知事が、その存在を認めたからだ。
面会記録では、柳瀬氏が「本件は、首相案件」だと発言したとされ、野党側は安倍晋三首相「加計ありき」の意向を示す傍証だとして攻勢を強めたい考え。柳瀬氏は面会の事実自体を否定する半面、中村氏は「出席したものの報告のために記述したというのは間違いない」と話しており、発言内容以前の、面会の有無の段階で主張が対立している。
文書の存在を写真付きで報じる
朝日新聞は18年4月10日朝刊の1面トップ(東京本社最終版)で面会記録の存在を「政府関係者に渡っていた文書を朝日新聞が確認した」などと文書の写真つきで報じた。写真から判別できる範囲だけでも、文書には柳瀬氏の発言として
「本件は首相案件となっており、内閣府藤原次長(編注:当時、地方創生推進室次長だった藤原豊氏)の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」
「いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」
といった記述が確認できる。
この文書をめぐり、中村知事は4月10日17時から会見。文書の現物は、電子ファイルを含めて確認できなかったとした。
「当時、この会議に出席した職員が、まさにその口頭報告のために作ったメモが、この文書の実態。この文書は保管義務がなく、今日の担当部局の調査でも、文書そのものは愛媛県庁内には、この段階では確認できていない。『ない』ということだ」
一方で、面会した職員がヒアリングに対して、文書を「備忘録」として作成したことを明かしたという。
「しかし、ひとりひとりの担当職員に、わたしも直接聞いた。『新聞に出ているこの文書はどうなのか』という確認をしたところ、当時担当した職員が出席した会議の口頭説明のための備忘録として書いた文章であるということが判明した」
安倍首相の意向は「分からない、コメントのしようがない」
中村氏は
「言えることは、県庁の職員は本当に真面目で、しっかりと出席したものの報告のために記述したというのは間違いない」
とも話し、県職員が柳瀬氏と面会したことを確信している様子だ。
一方の柳瀬氏は、今回の朝日新聞の報道を受けてコメントを発表。
「自分の記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方にお会いしたことはありません」
などと、17年7月の参院予算委員会での答弁と同様、面会の事実自体を否定した。
4月11日には、森友学園をめぐる文書改ざんの問題で衆院予算委員会で集中審議が予定されている。今回の「首相案件」問題もクローズアップされるのは確実だ。ただ、中村氏は
「私どもの立場としては長年の悲願であった今治市の願いがかなったということで、獣医学部がオープンしたことは歓迎している」
などとして獣医学部開設を歓迎する立場だ。安倍首相の意向が影響したか否かについても、
「分からない、コメントのしようがない。審査、それから認可の決定、ここは我々は全く関与していない。これはお願いする立場で、それが認められて新設したら、『さあどうしようか』『今回認められて良かったな』『悩みがひとつ解決するかもしれないね』という受け止め方。国の状況については、私はうかがい知ることはできない」
とするにとどめている。「首相案件」発言が仮にあったとすれば、柳瀬氏の「忖度」だったのか、それとも「総理の関与」だったのか。野党側がこのあたりを追及できるかは不透明だ。