北朝鮮、消えた「核」 機関紙の異変は何を意味するのか

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   ことあるごとに「核強国」を主張してきた北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙、労働新聞に異変だ。

   2018年4月9日の紙面では、故・金正日総書記の業績をたたえる長文の社説を掲載。軍事をすべてに優先させる「先軍政治」という言葉は健在で、軍事力の強化を訴える内容だが、そこで目指すのは「社会主義強国」。どういう訳か「核」という単語が姿を消した。5月末までに開催を目指す米朝首脳会談をめぐり、北朝鮮が米国に対して「朝鮮半島の非核化」を協議する意向を示したという報道もあり、関連が注目されそうだ。

  • 社説から「核」が消えた真意は?(写真は労働新聞から)
    社説から「核」が消えた真意は?(写真は労働新聞から)
  • 社説から「核」が消えた真意は?(写真は労働新聞から)

「核」ではなく「革命的武装力」強調

   金正日氏は1993年4月9日に国防委員会委員長に推戴され、軍の統帥権を掌握したとされる。この日の社説は、推戴25周年を祝う内容だ。

   社説では、

「強力な自衛的国防力は国家存立の基礎」
「人民大衆の自主的要求と利益を全面的に実現するための社会主義の政治は、軍事を重視して掲げる先軍政治でなければならないという独創的な思想を明らかにした」

などと正日氏の軍事優先の姿勢をたたえる一方で、最近の情勢について

「今、私たちを政治的に孤立させ、経済的に窒息させ、軍事的に圧殺しようとする敵対勢力の反共和国策動は極度に達している」

と解説。それに対抗するのは「革命的武装力」で、「核」という言葉は登場しなかった。さらに、

「金正日総書記が私たち共和国のさらなる繁栄のために成し遂げた最大の業績は、指導の継承問題を輝かしく解決されたことである」

などとして世襲を正当化し、正恩氏の指導のもとで

「国の軍事的威力をあらゆる面から強化し、社会主義強国建設のすべての面で新たな勝利を達成していかなければならない」

と主張。ここでも、やはり「核強国」という言葉は登場しない。

17年には「核強国」「核保有国」が頻出していた

   過去の労働新聞の社説を見ると、17年11月30日には、水爆実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」の発射を成功させたことを

「主体的核強国建設構想に伴う民族史的な大勝利、大変革」

と主張。12月15日には

「経済建設と核武力建設の並進路線が全世界に荘厳に宣言され、共和国の核保有国の地位が定まった」

と表現するなど、17年の労働新聞では「核強国」「核保有国」といった単語が頻繁に登場していた。

   中国国営新華社通信によると、正恩氏は3月26日に習近平主席と会談した際、

「金日成主席、金正日総書記の遺訓に沿って、朝鮮半島の非核化に尽力するというのが我々の一貫した立場だ」

と述べたとされる。これに加えて、朝日新聞やブルームバーグは18年4月9日、北朝鮮が米朝首脳会談で朝鮮半島の非核化について協議する意思を示していると、米当局者の話として報じている。北朝鮮の国営メディアは、この非核化の問題には沈黙を守ったままだ。

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