牧師も祈りもすべてがカジュアル
礼拝が始まると観衆が立ち上がり、バラード調の歌のオンパレードが始まった。リード・ボーカルの黒人男性の張りのある声やノリのよさは、もはやプロだ。歌いながら観衆を盛り上げ、「My God is awesome. He can move mountains.(私の神はすごい。山を動かすこともできる)」、「Christ is enough for me.(キリストのほかに何もいらない)」などと歌いながら、人々は手を天に向けて上げる。
会場には家族連れや若い人の姿も目立つ。伝統的な讃美歌は歌わない。祈りはマイク片手に、ピアノ演奏をBGMに捧げられる。
一連のライブのあと、ひとり橋の上を歩く男性の姿がビデオに映し出される。「幸せへと続くと信じていた道が、そうとは限らないのはなぜ?」と訴えかけたかと思うと、突然、カジュアルなシャツとズボン姿の男性が現れた。
主任牧師だった。普段、私が通っている教会の牧師と違って、黒いローブは身に着けていない。
「私たち人間は皆、不完全で盲目である。だから、人を導くことはできない。私たちが従うべきは聖職者ではなく、神のみ。教会に来て、洗礼を受け、十分な寄付をしても、人の作る法律に従って道徳的な生き方をしても、そうした『正しい』行いをしていない人を切り捨ておごり高ぶる人に、神の愛は得られない。『正しい行い』をしていなくても、神の前に謙虚にひれ伏し、罪を認める人に、神は手を差し伸べてくださる」
説教の内容は聖書に沿ったもので、ほかの教会とさほど変わりはない。が、「今日、教会をさぼってビーチに行った人は、オンラインでこれを見ているだろ。ほら、君のことだよ。僕には君が見えているよ」などと笑わせながらジェスチャーを交えて話し、聴衆を飽きさせない。
説教のあとはまたライブ・ミュージックで盛り上がる。最後も、かしこまった祝祷はなく、「さあ、外に出て、恵まれた一週間を」のひと言で、幕を閉じた。一貫して堅苦しさはまったくなく、明るくカジュアルな雰囲気だった。
「どうでした? 音楽が素晴らしいでしょう」とジェリーが笑顔で語りかけてきた。