2018年3月に世界初の人民元建て原油先物取引が上海で正式にスタートさせた中国にとって有利なのは、現在の石油が買い手市場にあることだ。
最大の石油輸入国として、中国はすでに一定の発言権を握っており、一挙手一投足が産油国の態度に影響する。
ロシア、ベネズエラ、イランが人民元決済に同意
現在、事実上、「オイル元計画」に参加し、人民元決済に同意している主要な産油国はロシア、ベネズエラ、イランなどで、これらはみな米国と緊張関係にある国だ。
だが、現状でオイルダラー時代が終結すると言うのは時期尚早である。「オイル元」そのものにも、まだ解決すべき問題が少なくない。
オイル元を中国に還流させたいのであれば、相応の投資可能の人民元資産がなければならない。
2017年、中国は香港に交易口座を開設している世界の投資家が中国銀行の債券市場に参入する利便性を高めるよう促している。
ブルームバーグは先ごろ、2019年に中国債券をブルームバーグ・バークレイズ国際総合インデックス(Bloomberg Barclays Global Aggregate Index)に組み込むと述べた。
だが、国際投資家は人民元に対してまだ疑念を抱いている。中国資本市場はさらなる開放が待たれるし、金融監督管理も一定のリスクをもたらすであろう。また、人民元為替相場もまだ市場を完全に開放しておらず、国際通貨としての交換性と自由な流通性も備わっていない。
中国に接近するサウジアラビア
「オイル元」が実現できるかどうかのより重要な一環は、やはり「オイルダラー」の創始者の一つであるサウジアラビアによるものだ。
High Frequency Economicsの首席エコノミスト、カール・ウェンバーグはCNBCのインタビューで、次のように述べた。
「中国はサウジアラビアに人民元で石油を決済させようと促しているが、一部だけだとしても、いったん米国とサウジアラビアがそれを許したら、世界の原油市場はいずれもその動きに追随し、大きく米ドル離れとなるだろう」
一方、中・米・サウジアラビア間の関係も非常に微妙なものになっている。
まず、サウジアラビアは中国原油供給市場で優勢だった地位をロシアに奪われる局面に直面している。2017年上半期、中国の石油輸入は前年同期比で13.8%増えたが、サウジアラビアからの供給量は前年同期比で1%しか増えておらず、ロシアの石油出荷量が11%上昇した。
次に、米ドルとサウジアラビア間の溝も大きくなり続けている。米国の新エネルギー革命、シェールオイルの大暴騰に加えて、中東からの米国の石油輸入が大幅に減り、サウジアラビア経済を直撃した。
サウジアラビアと米国の関係が非常に特殊だとしても、サウジアラビアが中国市場を失うという結果を受け入れることはできないのは明らかだ。
2017年10月、中国資本がサウジアラビアの石油資本サウジアラムコに5%の株式を購入することを提案した。サウジアラビアは現在転換期にあり、中国からの資金を必要としているので、この交易が結ばれる可能性は相当高い。そして中国がサウジアラムコの株を購入することは、中国が巨大な原油供給源をコントロールし、サウジアラビアの石油の定価決定権が米ドルだけに依存してきた状態から、米ドルに加えて人民元にも依存するように転換するのに役立つことを意味している。
米中貿易摩擦が拡大する現在、中国が原油先物交易という小さな行動を推し進めることは、短期的には米国にとって取るに足らないことであり、人民元国際化の過程にとっても小さな一歩に過ぎないが、市場の成り行きは一朝一夕で変わるものではない。
2018年3月27日の『ウォール・ストリート・ジャーナル』にはこのような文章が掲載された。「英ポンドが国際貿易を主導していた時代の終結が明らかにしているように、市場の発展の潮流は迅速に一種類の通貨を抑えて別の種類の通貨を普及させることに一役買うに違いない。危機の時では尚更である」
(在北京ジャーナリスト 陳言)