【震災7年 明日への一歩】釜石に建つ新スタジアム ラグビーW杯で世界に感謝を伝えたい

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住民自身が「何ができるか」と気持ちが前向きに

   スタジアムが建設されている鵜住居地区は、記者が訪れた4年前は吹きさらしの更地が延々と広がっていた。今日では新しい住居や学校といった建物が増え、津波で線路が流された鉄道も再建が進んでいる。道路も整備されてきた。それでも釜石市が100%復興したとは、必ずしも言い切れない。2018年2月末時点で、仮設住宅で暮らす人は1625人いる。

   釜石市ラグビーワールドカップ2019推進室主査の佐々木智輝氏の話では、市民からW杯の開催費、スタジアムの維持管理費に関する疑問が寄せられているのは確かだという。それでも釜石がW杯招致に名乗りを上げたのは、震災時に手を差し伸べてくれた世界中の人々に、「大きな感謝」を伝えたいとの強い思いからだ。観戦に訪れる人たちに、「釜石はここまで元気になった」と見せる、絶好の機会にしたいと望む。

   招致活動当初は地元でも「まだW杯どころではない」という意見はあった。だが開催地に選ばれ、スタジアム建設が進むにつれて「私たちは何ができるだろう、どうすれば世界中から来る皆さんをおもてなしできるだろうか」という相談が地域単位で寄せられるようになったと佐々木氏は明かす。市民がタウンミーティングを開き、住民ができることを市側と一緒に考える機運が高まってきた。駅に花を飾る、試合当日のゴミ拾い、観光客向けに地元を紹介するツアーを開く――。それぞれが身の丈にあった協力をしようと「気持ちが前向きになってきた」と佐々木氏は実感している。

   未来の釜石を背負う子どもたちにとっては、W杯とスタジアムが財産になってほしい。釜石では1次リーグ2試合が組まれているが、岩手県沿岸部の小中学生3000人が無料で招待される。市教育委員会では、市内の小中学校から代表者を集めて「釜石市子ども会議」(現「かまいし絆会議」)を発足した。子どもたちの視点でW杯開催にどんな協力ができるかを話し合う。例えば、対戦国の言語で巨大な旗をつくり、スタジアムに掲げて感謝の意を伝えようといった案が出ている。佐々木氏が所属する推進室は、地元の鵜住居小学校の子どもたち主導による釜石市のPR動画制作を後押しし、市のウェブサイトで公開した。

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