米国と韓国が2017年3月下旬、自由貿易協定(FTA)の再交渉で大筋合意したことで、米国の圧力が今度は日本に及ぶとの警戒感が強まっている。トランプ米大統領が米韓FTA大筋合意直後、「北朝鮮との合意まで(最終決定を)保留するかもしれない」と述べ、FTAを政治的圧力に利用する姿勢を鮮明にしたことが、さらに日本の関係者の危機感を高めている。
トランプ大統領は就任直後から米韓FTAの見直しを主張しており、交渉は2018年1月始まった。そして、わずか3か月後、米国製の自動車を韓国に輸出する際に非関税障壁を下げることなどを盛り込み、大筋合意に至った。米国が鉄鋼やアルミ製品の輸入に高関税をかける方針を打ち出し、韓国に対しても、高関税の対象国からの除外をちらつかせて妥協を迫った。加えて、在韓米軍を撤収する可能性を示すなどし、一貫して交渉をリードしてきたとされる。
今秋に中間選挙
日本をさらに驚かせたのは、その直後のトランプ大統領の発言だ。米韓FTAについて、韓国が北朝鮮に妥協するような場合は保留する可能性がある、と指摘したのだ。大筋合意したとはいえ、署名などの手続きはまだ終了しておらず、トランプ大統領は保留が「強いカードになる」とも語った。4月下旬の南北首脳会談を前に、韓国の動きをけん制する姿勢を示した形だ。
トランプ大統領がここまで強気に出る背景には、今秋の中間選挙があるとされる。トランプ大統領にとっては、初の全米規模の信任投票という意味合いを持っており、FTAなどの通商政策で成果を出しておきたいためだ。
こうした動きに、日本では「次に日本を攻めてくるのは必至」(政府関係者)との見方が大勢を占める。トランプ大統領は3月22日、安倍晋三首相の名前を出しながら「各国(の首脳)は『米国をうまく利用してきた』とほくそ笑んでいる。そうした日々は終わりだ」と言い放っており、日本にFTA交渉を求めたい意向とされている。