東レが2018年3月30日、「品質データに関する一斉調査結果のお知らせ」と題するプレスリリースを公式サイトで公表した。
ただ、東レは品質データの改ざんがあったのか否かという、誰もが聞きたい本質的な疑問については明らかにしておらず、記者会見もなく、マスコミ各社の取材にも「(あったのか否かは)答えられない」という対応だった。
「情報開示の面からは不十分ともいえる」との指摘も
一連の品質データ改ざん問題で、神戸製鋼所や三菱マテリアルなどは、法令違反や安全性にかかわらず、データ改ざんがあった場合は公表している。データ改ざんが見つかれば企業が自ら公表するのは、経団連の呼びかけもあり、業界のスタンダードとなりつつあった。
これに対して、東レは法令違反や安全性に問題があった場合のみ、公表すると社内基準で定めている。品質データ改ざんの事実をどこまで公表するかは各社の判断だが、東レはこの日、記者会見も開かず、マスコミ各社の問い合わせに「データ改ざんの有無については答えられない」と回答するだけだった。
発表翌日の3月31日付朝刊では、「東レは改ざんなどの不正が新たに見つかったかどうかは明らかにしなかった」(読売新聞)、「品質データ改ざんがあったかどうかについては明らかにせず、グレーゾーンが残る調査結果となった」(毎日新聞)、「改ざんの有無について調査結果では社内規定を理由に非公表としており、情報開示の面からは不十分ともいえる」(産経新聞)など、東レの姿勢を厳しく問う報道が相次いだ。
法令違反なくてもデータ改ざんを公表した社も
東レは2017年11月、自動車用タイヤの補強材などを製造する子会社の東レハイブリッドコード(愛知県西尾市)が製品の検査データを改ざんしていたと発表した。この時も法令違反などはなかったが、インターネットへの書き込みのほか週刊誌の取材が先行したため、東レがやむなくデータ改ざんを公表した経緯がある。この時の記者会見で、東レの日覚昭広社長は「本来なら公表するつもりはなかった」と発言し、報道陣の質問攻めに遭った。
東レは経団連の榊原定征会長(東レ相談役)の出身会社だ。榊原会長は子会社のデータ改ざんを受け、会員企業に品質管理で不正がないか自主的な調査を行い、法令違反などが見つかった場合は速やかに公表するよう呼びかけた。
会員企業では大手化学メーカーの宇部興産などが、品質データ改ざんが見つかったと発表した。発表時点では法令違反はないという。ところが率先垂範するはずの経団連会長会社の東レが改ざんの有無すら明かさないようでは、東レに対する不信感が解消されないだけでなく、日本の製造業に対する国際的な信頼回復も遠のいてしまう懸念が出かねない。