視聴率も20%を超え、好調な滑り出しのNHK朝ドラ「半分、青い。」。だが、一部視聴者からは「時代考証」に関するツッコミの声も上がっている。
特に2018年4月5日放送回では、往年の特撮ドラマ「マグマ大使」が引用されたのだが、これがちょっとした議論を呼んでいるのだ。
主人公は71年生まれ、マグマ大使は66年
「半分、青い。」は永野芽郁さん演じるヒロイン・楡野鈴愛(にれのすずめ)の半生を描く物語だ。鈴愛は岐阜県東部出身、1971年生まれという設定で、その成長とともに、移り変わる現代日本の姿が描かれるとされる。
5日放送回では、9歳に成長した鈴愛が、幼なじみの萩尾律の元に遊びに行く場面が描かれた。キャベツを手土産に萩尾家を訪ねた鈴愛は、「りーつー!」と声を上げつつ、小さな笛を吹く。その姿に重ねて画面に映し出されたのは、特撮ドラマ「マグマ大使」の一場面だ。「マグマ大使」では、主人公の少年が笛を吹くことで、「ロケット人間」であるマグマ大使らを呼び出すことができる。幼い鈴愛も、テレビで見たその姿を真似している――というわけだ。
ところが、このシーンが放送されるや、ツイッターではちょっとした騒ぎが巻き起こった。
「1980年で子供がマグマ大使の真似するのはどう考えても無理があるんだよなーうーん マグマ大使は再放送の記憶ないし、笛吹いて呼ぶとか知らなかったぞ...」
「1971年産まれの小学校三年生はマグマ大使を知らないと思うんですが?」
「私、鈴愛たちよりもちょっと年齢が上なんですけど、マグマ大使ってよく知らないです」
というのも、鈴愛は上記のように71年生まれだが、「マグマ大使」が放送されたのは66年~67年なのである。生まれる前の特撮ドラマのネタを、鈴愛が知っているのはおかしいのでは――?
直後の「あさイチ」冒頭でも、ヒロインと同世代であるMCの博多華丸・大吉さんらが、「流行ってたものが同じ」と語る一方、近江友里恵アナに「笛吹いたりしてました?」と振られると、
「笛は僕は......」(華丸さん)
「笛は吹いてないしキャベツ持って走ってない(笑)。これは地域差あるんでしょうね」(大吉さん)
と応じる場面もあった。
ツイッターで多くつぶやかれた言葉を表示するトレンド欄にも、「マグマ大使」がランクイン、番組を見ていなかった人々を驚かせることとなった。
「ビニール傘」をめぐっても議論が
視聴者からは脚本の北川悦吏子さんが61年生まれということもあり、自分の記憶と混ざっているのでは?との声もある一方、当時は特撮作品などの再放送は頻繁に行われていたことも指摘されている。特に地方局ではかなり古い作品も繰り返し放送されており、「全然不自然ではない」「これは逆に『世相を反映』してるかも?」という反論も多い。
これに限らず「半分、青い。」は近い時代の過去を題材としているだけに、視聴者からはその「時代考証」にたびたび異論がさしはさまれている。とはいえ、視聴者の側にも、地域差や記憶違いなどがあるようだ。
たとえば2日の初回、高校生の鈴愛がビニール傘を使う場面に対しては、「鈴愛が高校生の80年代後半、ビニール傘は広まっていなかった!」という声が複数上がった。だが、1987年の新聞記事によれば、すでに年間洋傘消費量のうち、3分の2近くが「ビニール傘など安価な台湾製傘」だったといい(日経産業新聞、5月9日付)、88年時点で値段も500円前後、との記述がある(日経流通新聞、7月5日付)。
また、地元の人々が巨人戦に盛り上がるシーンにも、「岐阜県なのに中日ファンじゃないのはおかしい!」という声も出ているが、「中津川&恵那で育った父が、俺も巨人ファンだったし東濃は割と巨人ファンの人割といたんじゃないかなって言ってた」「テレビで観戦している当時の岐阜の人々は、中日じゃなくてV9時代の巨人を応援してたと聞いてる。うちの父親がそうだった」といった向きもある。
北川さんは本作の執筆に当たりツイッターで、71年生まれの人々に当時の文化についての思い出などを質問し、話題を呼んだ。今後も、昭和後期~平成のさまざまな流行が登場し、SNSが沸くことが予想される。