京都府舞鶴市での大相撲春巡業で、あいさつ中に土俵上で倒れた市長の救命にあたった女性に「土俵から降りてください」とアナウンスがあった問題で、会場で生観覧していた客の一人は「騒然としていました」と現場の様子を語った。J-CASTニュースの取材に答えた。
大相撲では、「女人禁制」として土俵に女性があがることを禁じている。だが、人命がかかった状況で救命活動をした女性にこのルールを当てようとしたことには、各所で疑問の声があがっている。取材に応じた客も、「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」という声が客席からも聞こえたと明かす。
「女性の方は土俵から降りてください。男性がお上がりください」
舞鶴での春巡業は2018年4月4日に行われ、多々見良三市長が土俵上であいさつしている最中に倒れた。まず男性スタッフ複数人が土俵にあがって市長を囲むと、その後で観客とみられる複数の女性が土俵にあがり、心臓マッサージを始めた。
動画サイトにアップされた現場動画などによると、ざわつく場内に「皆様、お座りになりますようお願い致します。お座りください」というアナウンスが入った。そして、救助隊員が到着しかけると、
「女性の方は土俵から降りてください。女性の方は土俵から降りてください。女性の方は土俵から降りてください。男性がお上がりください」
と指示された。女性らは駆けつけた隊員らに何かを伝えて引き渡した。市長は担架で運ばれた。
会場の2階席で観覧していたというある女性は5日、J-CASTニュースの取材に応じ、当時の現地の様子を明かした。土俵にあがった女性たちについては、救護に手間取る「男性たちを見かねて出てこられた印象でした」とし、「少なくとも心臓マッサージを始められたのは、女性の方が最初でした」と話す。観客席の状況については、
「市長が倒れられた時は騒然としていました。女性が救命措置を施していらっしゃる途中にそのアナウンスがあった時には、少なくとも私を含め周りにいらっしゃった観客の方々は『女性は?!何言ってるん?!』『そんなこと言ってる場合じゃないだろ!』と憤っておられました」
と明かした。
「本当に何事もなかったかのように再開されました」
市長が倒れたことで中断したのは数分間だったという。救護活動を終えて再開したが、アナウンス等については
「その後一切の謝罪や説明などはなく、本当に何事もなかったかのように再開されました」
という。
人命がかかった状況での「降りて」というアナウンスに対し、女性は「強い怒りと悲しみと不安と...様々な気持ちが入り乱れておりました。なんの説明のないまま(ちゃんと救急搬送されたことも、現場にいらっしゃった警察官の方にお尋ねして初めて知りました)でしたので、暫くは気が気じゃなく、全く集中出来ませんでした」と当時の率直な心境を明かした。
各メディア報道などによれば、市長は病院に搬送されたが命に別条はない。精密検査を受けるという。また、救命にあたった女性は医療関係者という情報もある。
一方、日本相撲協会は4日、八角理事長の名義で謝罪文を出した。「とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます」としたうえで、「応急処置のさなか、場内アナウンスを担当していた行司が『女性は土俵から降りてください』と複数回アナウンスを行いました。行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くお詫び申し上げます」としている。