自治体が「上乗せ」規制
一方、現状では、各地で住民とのトラブルなど問題も続発している。基本的にネットの仲介サイトを通じた貸し借りで、貸主がいないマンションの1室などが民泊になるケースが多い。特に外国人の宿泊者が多いことから、ゴミ出しのマナーを守らない、夜中に騒ぐなどのトラブルが社会問題化している。例えば、外国人客が多く訪れる東京都新宿区への民泊に関連した苦情相談件数は2013年度の3件から、16年度は246件、17年度は1月までの10か月ですでに305件に達している。大阪でバラバラ殺人の舞台になったように、犯罪に悪用されやすいという問題も、クローズアップされている。
このため、法律に「上乗せ」する形で各種の規制をかける自治体が多い。民泊は「生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において」、自治体による法律を超える制限を認めている。
目立つのは住宅地での規制。兵庫県や神戸市、同県尼崎市は住居専用地域や学校周辺を中心に年間を通じて原則禁止する。都内では全国に先駆けて条例を成立させた大田区が住居専用地域や工業地域などで通年禁止。世田谷区は「住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」を制定し、同区の面積の78%を占める住居専用地域で月~金曜の宿泊(月曜正午~土曜正午の利用)を禁止するので、利用できるのは週末の2泊(土曜正午~月曜正午)と祝日だけになる。中野区も同様に月曜正午~金曜正午の利用を禁止する。
観光地では京都市が、住居専用地域での民泊は町家で営業する場合や家主が物件内に居住するなどの例外を除き、冬の閑散期の60日間のみに営業を限定。金閣寺や南禅寺、下鴨神社などの観光名所の多くは住宅地に散在しており、周辺ではほぼ営業できなくなる。
2月に政府がまとめたところでは、都道府県や政令市、中核市、東京特別区など全国144自治体が民泊の所管権限を持ち、都道府県に権限を委ねるところを除く102自治体が実際に事務を担う見込み。このうち制限しないのは33自治体だけで、44自治体が区域や期間を条例で制限する意向で、残る25自治体は模様眺めという。