東京五輪へLCCバトル激化必至 ピーチとバニラ統合の勝算

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   格安航空会社(LCC)国内2位のピーチ・アビエーションと、同3位のバニラ・エアが2020年3月期末をめどに統合することになった。17年3月期の売上高を単純に合計すると760億円程度となり、LCC国内首位のジェットスター・ジャパンを上回ってトップに躍り出る。日本とアジアを結ぶ中距離路線拡充が大きな狙いで、先行する海外LCCを追う。

   両社はともにANAホールディングス(HD)の傘下にある兄弟会社。ピーチは2011年に全日本空輸(現ANAHD)などの出資で設立、17年4月にANAHDが子会社化した。バニラは全日空とアジア最大級のLCCエアアジア(マレーシア)が共同出資して11年に設立した旧エアアジア・ジャパンが前身で、エアアジアの日本撤退を受けて13年にバニラ・エアに衣替えし、その後、ANAHDの100%子会社になって現在に至る。

  • LCCバトル激化(画像はイメージ)
    LCCバトル激化(画像はイメージ)
  • LCCバトル激化(画像はイメージ)

資機材・人員の効率運用と人材育成

   ANAHDは今回の統合に向け、2018年4月に香港の投資会社からピーチの株式を113億円で取得し、ピーチへの出資比率を現在の67%から77.9%に高める。

   両社の力を比べると、2017年3月期の売上高はピーチ517億円に対し、バニラは239億円。国内線・国際線を合わせた路線数も現在、ピーチ29、バニラ14と、ほぼ2対1の差がある。バニラは17年3月期に赤字に転落するなど勢いがなく、実質的にピーチ主導の統合になる見込み。バニラの機体を順次、ピーチに塗り替え、20年3月期末までに完全に統合する計画。21年3月期の売上高は両社の現状の合計の約2倍にあたる1500億円、営業利益は150億円をめざす。機体は今の約1.4倍の50機に、就航路線も国内外50路線と3割ほど増やすことをめざすとしている。

   統合の組み合わせとして、両社は同じグループ内というだけでなく、相性が良いと言える。ピーチは関西空港を、バニラは成田空港を拠点にしており、重複する路線は3路線だけ。しかも、機材は同じ「エアバスA320」を使い、パイロットの融通が可能だ。ピーチはパイロット不足で減便に追い込まれたこともあるように、パイロット確保が困難になってきている中で、両社の統合による資機材・人員(整備士を含む)の効率運用、さらに人材育成も、今回の統合の隠れた狙いだ。

海外勢の国内地方路線への参入は脅威

   ただ、これで海外勢と対等に渡り合えるかといえば、そう簡単ではなさそうだ。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて競争激化は必至。売上高が2000億円を超えるエアアジアをはじめ、体力に勝る海外大手LCCが日本路線の拡充などで、訪日外国人客の争奪戦は激しくなる。海外勢が、ピーチなどが主戦場としてきた日本国内の地方への路線に参入してくるのは脅威だ。大都市などを結ぶ幹線は親会社のANAを含む大手が押さえ、LCCは地方路線に活路を見いだすという構図がどう変わっていくか。海外勢の動向は読み切れない。

   他方、日本のLCCとしては、アジアを中心とする海外への進出も課題だ。現在、ピーチがタイ、バニラがフィリピンに運航しているが、インドネシア、マレーシア、インドなど「中距離」の路線網を広げることが成長には欠かせない。ただ、これらの路線は、海外LCCとの厳しい競争が予想される。

   ピーチの場合、国内の地方路線で自治体との協力を重ねることで需要を開拓するといった地道な取り組みが成果を上げてきた。また、交流サイトの「インスタグラム」で積極的に情報を発信し、若い女性顧客を獲得するといったマーケティングにも長けているとされる。

   「価格競争に陥れば、未来はない」(業界関係者)と言うように、統合会社がどのような新たなサービスを打ち出せるかが、アジアの大手との競争のカギを握っている。

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