「君、クリスチャンなのか」
最近は忙しさにかまけて教会に行かないことも多く、胸を張ってクリスチャンとは言いにくいが、20数年前に洗礼を受けている。
ジェリーは「Are」にアクセントを置いて、疑問文のように語尾を上げずに、驚きと喜びを隠し切れない感じでゆっくりと言った。
「あなた、そうだったの(Are...you.)」
アルもほぼ同時に、「何だって。君、クリスチャンなのか。神よ、感謝します(Oh, you are a Christian! Thank you, Lord.)」と目を輝かせた。
「あなたのために、神を賛美しましょう、ハニー(Praise God for you, honey.)」とジェリーが喜びに満ちた声で私に言った。
長年、アメリカに住み、クリスチャンとわかってこれほど喜ばれたことがあったか、ちょっと思い出せなかった。
私は気になっていた質問をした。
「ジェリー、あなたはさっき、アメリカは建国当時のようなキリスト教国家に立ち戻らなければと言ったけれど。今のアメリカは建国当時とは違い、数多くのイスラム教徒やユダヤ教徒、仏教徒もいます。キリスト教国家に立ち戻るというのは、ほかの宗教を信じる人たちを拒絶していると考える人たちもいると思うのですが。あなたは現実とどう向き合っているのかしら」
「現実とどう向き合っているのか? キリスト教徒でない人たちに、私は審判を下せないわ。審判を下せるのは、神だけです。それは神に委ねます。ほかの宗教を信じる人たちが、何に対して祈っているのか。ほかの宗教のことはよく知らないので、うまく答えられないけれど。異教徒でもキリスト教に改宗した人たちはいるんです。じゃあ、ミッツィ、あなた自身はいったい、このことをどう思うの?」
「私自身はどう思うか、ですか」
私は洗礼を受けていながら、「人が天国に行く道はたったひとつ、それはイエスを信じること」という、クリスチャンにしてみればごく当たり前の「真理」に、今も戸惑いを覚えることがあると、正直に話した。