スーパーとレストランが一体化した新しい店舗業態「グローサラント」が今、急速に広がっている。高級スーパー、成城石井が昨2017年秋、東京都調布市の京王線調布駅の商業施設に出店した「成城石井トリエ京王調布店」をはじめ、イタリア発の「イータリー」や、大手総合スーパー、イオンなども続々と参入し、注目を集めている。
グローサラントは、食料品の販売店を指す「グローサリー(grocery)」と「レストラン(restaurant)」を合わせた造語だ。米国発祥とされ、米大手スーパー、ホールフーズ・マーケットなどが展開し、来客数の増加につなげるなど話題になっている。
本格的な料理を提供
東京都千代田区の東京駅地下構内には昨17年夏、「イータリー グランスタ丸の内店」がオープンした。店内の入り口付近では、イタリア産のワインやチーズ、ハムなどを販売しており、一見、オシャレな輸入食材店だ。しかし、店内を奥に進むと、椅子やテーブルを置いたレストラン空間が表れる。レストランではパスタ料理など本格的なイタリア料理を楽しむことができ、食事の帰りにチーズなどを買い求める人もいる。
グローサラントは、コンビニエンスストアで増えているイートインのように、単に店で売っている弁当や総菜を食べられる場所を置くだけではない。店で売っている肉や野菜などの食材をその場で調理し、できたての本格的な料理を提供するのが特色だ。客は食べたものが気に入れば、販売コーナーで買って帰ることができる。店で販売している気になる食材がメニューで使われていれば、レストランを試食の場に利用することも可能だ。
買い物ついでに飲食
こうしたグローサラントの動きは、多くのスーパーの間に広がってきており、成城石井トリエ京王調布店では、レストランコーナーでハンバーグやステーキなどを提供し、質の良い食材を使った味のよさなどが好評だ。イオンでも、17年夏オープンした「イオンスタイル新浦安MONA店」(千葉県浦安市)などでグローサリー型の店舗を展開。注文を受けてから調理する生パスタや手作りサンドイッチなどが評判で、買い物ついでに飲食していく人も増えているという。
なぜグローサラントは広がっているのか。「仕事をもつ女性が増えて、家で食事を作らない家庭が増えており、スーパーは食材を売るだけではじり貧になっているため」と流通業界関係者は話す。「コンビニコーヒーが定着し、女性が外で気軽に物を食べることに抵抗感をもたなくなったことも大きい」との指摘もある。 ただグローサラントは日本ではまだ始まったばかりで、課題も少なくない。ある小売り関係者は「アルコールまで提供して、お客さんに騒がれたら、ファミリー層が敬遠するかもしれない」と懸念を示す。
各社は試行錯誤をしながら取り組みを慎重に検討していく構えだ。