東京電力ホールディングス(HD)傘下の小売専業会社、東京電力エナジーパートナー(EP)が、ガス会社との関係強化に動いた。2018年3月22日、日本瓦斯(ニチガス)に出資すると発表したのだ。両社は電力・ガスのセット販売で既に提携関係にあるが、関係を一層強化する。首都圏ではほかに「関西電力・東京ガス」「中部電力・大阪ガス」がそれぞれ連携を強めており、三つ巴の陣取り合戦が激しくなりそうだ。
発表によると、東電はニチガスの発行済み株式の約3%を取得とともに、ニチガスに取締役1人を派遣する。ニチガスは3月29日、東電側による株式取得が完了したと発表した。
電力の卸供給方式に切り替える方針
両社は2015年10月、業務提携契約を締結。東電が提供する電力と、ニチガスが提供するLP(液化石油)ガスや都市ガスを組み合わせたセット販売の枠組みを作った。
ただし、セット販売といっても「販売代理方式」。ニチガスは東電の販売代理店という位置づけのため、独自の料金プラン設定などに踏み込めなかった。東電は今回の出資を機に、電力の卸供給方式に切り替える方針だ。ニチガスにとっては、多様な料金プランを設定するなど、独自色を強められる。
ニチガスが現状より安いプランの電気を売り出せば、東電の顧客もニチガスに流れかねない。東電にとっては痛手だが、元をたどれば東電が供給しているため、他陣営に顧客を奪われるよりは傷が浅い。
それより、東電にとってのメリットはガス販売の増加が期待できること。ニチガスは、都市ガスの全量を東電から調達する契約を結んでいる。ニチガスが電気・都市ガスとセットで販売量を増やせば、東電のガスの卸売り量も増えるというわけだ。2017年7月に家庭向けガス小売りのサービスを始めた東電の契約数は提携先も含めて約60万件と、目標を上回るペースだが、あらゆる手段で収益拡大を目論んでいる。
関電も中部電も
両社が提携を強化するのは、ライバル、東ガスが存在感を高めているためだ。東ガスは、2016年4月に電力小売りが全面自由化されてからの約1年半で100万件の顧客を獲得。18年4月には、1人暮らしなど電気使用量が少ない人向けのプランを新たに開始するなど、「20年度に220万件」という次の目標へ向けて手を打っている。
東ガスと関係が深いのが関電だ。両社は液化天然ガス(LNG)の調達や発電所の運営、不動産事業などで次々と連携しており、今後も提携分野を広げていく方針。関電は地元で大ガスに攻め込まれており、首都圏攻略が課題となっている。電気・ガスの販売でも協力を目指すとみられる。
他方、中部電と大ガスは2018年4月、首都圏で電力・ガスの販売事業をてがける「CDエナジーダイレクト」を折半出資で設立する。準備が整い次第、販売をはじめる予定で、将来は300万件の顧客獲得を目指すと宣言している。
戦いはまだ始まったばかり。魅力的・独創的な料金体系やサービスをいかに打ち出せるかが勝敗のカギを握りそうだ。