【震災7年 明日への一歩】人口流出に悩む気仙沼大島 橋の早期開通を待ち望む住民たち

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「観光で来る多くの人たちに喜んでもらえる島に」

   気仙沼市の発表によると、震災前の2011年2月末時点での人口は3249人だったが、18年2月末現在で2513人と、7年前と比べて2割以上減った。残った島民の半数近くは65歳以上だ。

   こうした現状に、大島在住の小野寺しめ子さん(78)は島の将来を憂慮する。人は減り、子どもの元気な声を聞いたり姿を見たりする機会は少なくなった。

   それだけに、橋の開通は待ち遠しい。村上さんが話したように、高齢の住民にとっては総合病院へのアクセスが大幅に改善されるのが大きい。島からの通勤通学も楽になるはずだ。

「生活範囲が広くなり、時間に束縛されず自由に行き来ができるようになります」

   島の観光活性化にも、小野寺さんは期待を寄せる。島北部にある標高235メートルの亀山の山頂に行くと、眼下にリアス式海岸の美しい風景が広がり、雄大な山々を望むことができる。海水浴場として人気がある小田の浜ほか、海辺も魅力だ。交通の便がよくなれば、こうした豊かな自然を求めて都会からの観光客が増える可能性がある。

   もちろん橋がすべてを解決してくれるわけではない。かつて亀山の展望台には港からリフトがつながっていたが、震災時の火災で焼失して今も再建されていない。観光ガイドの経験が豊富な小野寺さんによると、島の民宿や観光業の後継者不足は深刻だ。観光客を迎える態勢の整備が必要となる。

   もうひとつ、気がかりがある。市が橋の完成に合わせて進めてきた新しい観光拠点「大島ウェルカム・ターミナル」の供用開始に遅れが生じる点だ。拠点には地元の商業施設が入り、駐車場を整備する。車やバスで来た観光客が土産物ほかショッピングを楽しめるようになる。だが、橋の開通時にオープンしていなければ、最も注目されている時期に商機を逃すばかりか、「大島に行っても買い物すらできない」と観光客に悪い印象を与えかねない。

   ただ明るい兆しも出てきた。気仙沼市産業部商工課に取材したところ、市が18年3月24日、大島住民を対象に開いた説明会で、拠点用地の造成工事が当初予定から7か月早まり、19年2~3月に完了すると明らかにした。商業施設は民間業者が建設するが、3月25日付の河北新報(電子版)は、「早ければ19年6月にもオープンする見通し」と報じた。

   小野寺さんも、大島ウェルカム・ターミナルの早期完成を望む。

「観光で来る多くの人たちに喜んでもらえる島になって欲しいのです」

   新しい橋が文字通り、島外の人との「架け橋」となり、大勢の訪問客でにぎわう大島の姿が見たい。住民にとっては、生活環境の向上につながってほしい――。震災で傷ついた多くの島民が、橋を渡れるようになる日を心待ちにしている。

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