貴乃花親方は「委員」から「年寄」への2階級降格が決定し、一連の騒動は収束した雰囲気もあるが、大相撲界の問題は終わったといえるのか。
かつて力士暴行死事件の再発防止検討委員会で外部委員だったやくみつる氏は、「内閣府に告発した事柄を、いくら取り下げたとはいえ、吟味しなおす必要が八角内閣にはあろうかと思います」と、貴乃花親方が日本相撲協会のガバナンスの問題を指摘した「告発状」の検証を求めた。
「我々と一致団結して相撲協会を良くしていくため、力を尽くしてほしい」
相撲協会は2018年3月29日の理事会後に会見を開き、八角理事長が貴乃花親方の降格処分の理由を読み上げた。
「三月場所において初日に欠勤届を出さず、無断で欠勤したのに続き、何度も役員室に出勤するように求めたにもかかわらず、その要請を無視して中日(8日目)まで正当な理由もなく欠勤を続けました。この行為は協会員規則に定められた職務専念義務に違反し、懲罰規定の改善の催告をしたにもかかわらず、これを拒否もしくは無視したときに当たります。また、貴乃花親方は(弟子の十両)貴公俊の暴力の監督責任もあります」
同席した鏡山危機管理部長も説明。「降格は重い処分ですが、親方としての仕事はすべてできます。弟子の指導もできます。親方自身、(28日の)年寄総会で『深く反省しています。ゼロから出直します』と話しています」とし、
「協会のいち年寄として、我々と一致団結して相撲協会を良くしていくため、力を尽くしてほしいという願いを込め、このような処分としました」
と期待を込めた。
協会の役職は(1)理事長(2)理事(3)副理事(4)役員待遇委員(5)委員(6)主任(7)年寄――の7つ。貴乃花親方は18年1月に「理事」を解任されて「役員待遇委員」となり、3月28日の理事会で「委員」、そして今回の「年寄」と、3か月ほどで一気に5階級降格したことになる。
やくみつる氏は29日放送の「みんなのニュース」(フジテレビ系)に出演し、「つい先日まで理事だった方が落っこって落っこって、とうとう平年寄と一番下まで落ちた。いささか異例と思いますが、他の親方からは契約解除という声もあった中では落ち着いたという気はします」と処分内容に所感を述べた。
ただ、17年11月の元日馬富士暴行事件から続く一連の問題は、これで収束というわけではなさそうだ。
「うやむやにすると、じゃああの件は一体何だったんだ、となりかねない」
やく氏は
「捨て置かれた形になった内閣府に告発した事柄を、いくら取り下げたとはいえ、吟味し直す必要が八角内閣にはあろうかと思います。八角親方が理事長に再選したとはいえ、自分が(理事長で)いる間に起きたことですから、これでうやむやにすると、じゃああの件は一体何だったんだ、となりかねない。これは吟味し直す必要が当然あろうかと思います」
と訴えた。
貴乃花親方が三月場所前、内閣府公益認定等委員会に提出し受理された「告発状」。貴乃花親方はブログで、元日馬富士暴行事件の協会による調査が第三者によるものでなかったこと、その後同親方は理事解任処分を下されたが解任事由に当たらないと考えていることなどから、公益財団法人としての相撲協会の運営に「重大な疑義」があると指摘したとしていた。だが同親方は28日、この告発状を取り下げる旨を内閣府に文書で伝えたと発表している。
こうした告発の内容について、やく氏は番組で、
「八角理事長は現実にできること、再検証の余地はありやなしやということは言明していただきたい」
と求めていた。