「証人喚問みたいだね」。小倉智昭さんが2018年3月29日放送の「とくダネ」(フジテレビ系)で思わずこぼした。国会ではなく、日本相撲協会についての印象だ。
異例の長時間にわたった28日の臨時年寄総会は、開始前に「貴乃花親方の問題行動をまとめた約5分のVTR」が貴乃花親方不在で上映されたうえで、開始後に同親方への質問と応答がなされたという。VTR以外にも、貴乃花親方への「代表質問」のようなものをまとめた資料が親方衆に配布され、元日馬富士暴行問題に関する内容もあったとしている。
「このタイミングですることなのかな」
VTRの存在に小倉さんが「貴乃花親方を厳しく問い詰め、叩くための材料を最初に提示したのか。こういう映像が流れるのを貴乃花親方はご存知だったのか」と述べると、相撲レポーターの横野レイコ氏は「忘れている親方もいるから思い出してもらうためだったかもしれない。貴乃花親方はご存知なかったと思います」と答えた。
また番組は、貴乃花親方への「代表質問」をまとめた資料に、元日馬富士と十両・貴公俊それぞれの暴力問題について「和解しているのに、どうしてあのような大問題にする必要があったのか」という項目もあったと伝えた。
「和解」としているが、日馬富士事件は協会側と貴乃花親方側の主張が食い違っている。社会学者の古市憲寿氏は、「日馬富士の件は貴乃花側に理があると思っています。相撲界独特のルールでなく、刑事事件として世間一般のルールで裁こうという方針は理にかなっていたと思います。蒸し返してバッシングするのは、このタイミングですることなのかな」とし、女優の新妻聖子さんも「貴乃花親方が弟子の貴公俊の問題で弱っているところに一斉攻撃している感が否めない」と、協会のやり方に疑問を投げかけた。
貴乃花親方は年寄総会後の会見で、謝罪と反省の言葉を力なく繰り返し、長時間質問攻めにあったことを思わせた。ただ、番組で横野氏は、
「年寄総会が『寄ってたかって貴乃花一人をいじめている』みたいな感じに映ると思いますが、そうではなくて、他の親方たちの中では17年11月の日馬富士問題からずっと、『協会へのバッシングでむしろ俺たちが貴乃花にいじめられているんだ』という声もあって、『どうしてああいうことをメディアの力を利用して言ってしまうんだ』と不満が高まり、今回の臨時総会になったんです」
と理解を求めた。貴乃花親方については「終始うなだれて、批判的な声が多かったので晒し者のようだった」といい、これに小倉さんは「証人喚問みたいだね」とこぼした。
「何があっても相撲第一」
さらにスタジオ内で激しく意見が対立する場面もあった。横野氏は総会の模様のある場面を称賛。
「貴乃花親方が『これから頑張ります』と繰り返していたところに、芝田山親方が『これからじゃなくて今まで何をしたかが問題。あなた一人の言動で協会の1万人の家族の生活を脅かしかねないことをした』と昏々と諭すように仰ったそうです」
だが、古市氏は
「協会がずっと良い組織だったらいいけど、これまでも八百長事件とか暴行事件とかたくさんありました。貴乃花が何らかの改革をしようとしていたのは本当だと思います。それを無視して...」
と苦言を呈した。横野氏は、
「それはみんな言うけど、貴乃花親方だけが改革しようとしていたわけでないです。貴乃花親方は具体的なことを何も仰ってない。それはみんなでやりましょうよ、という...」
と割って入った。
再度反論する形で古市氏は
「相撲協会がこれまで、いろんな事件を起こしてきてある意味変わってこなかったのは事実です。なぜ横野さんはいつも相撲協会の肩を持つようなことばかり言うのかな」
と述べると、横野氏は
「違うんです。この報道があまりに偏り過ぎている。私は親方たちの取材もいっぱい知っているので、この騒動によって、昨日いろんな部屋にも行きましたけど、若い力士が一番苦しんでいます。相撲に集中できない状況があったことが一番怒っている原因だと思います」
と主張した。
その後も古市氏は
「貴乃花親方をみんながいじめているように見えちゃって、変えたいという思いがあって頑張ってきた人と協会がぶつかるのは当然。その頑張りまで含めて否定されるのは違うのかなと思います。ただ横野さんとか、相撲に詳しい方ほど、当初から貴乃花に批判的ですよね。何が嫌なんですか」
と真正面から質問。横野氏は
「嫌というか、本場所が大相撲界の中心です。何があっても相撲第一。力士を集中させるのが仕事です」
と、本場所中やその前後に問題を起こした貴乃花親方を念頭においたように発言していた。