米トランプ大統領が繰り出す「アメリカ・ファースト」な政策が世界を揺るがす影響で日本株が全体的に弱含む中、牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーホールディングス株が上場来高値を更新する「逆行高」を演じている。
足元で進む円高は輸出産業には重荷だが、国内で飲食店を展開する会社には食材の輸入価格が下がるため朗報となっており、弱気に覆われがちな市場で成長株を物色する投資家の注目を浴びている。
「値上げ」に踏み切る
2018年3月16日の金曜日、ゼンショーHD株は一時前日終値比54円高の2394円まで上昇し、上場来高値(株式分割の影響反映)を更新した。その翌週も株価は堅調で、22日には一時、2465円まで伸び、2500円をうかがう勢いを見せる。ゼンショーHD株は日経平均株価が調整局面を迎えた2月上旬以降、むしろ上昇気流に乗っており、2月1日の終値(1938円)から直近高値を記録した3月22日の終値(2462円)を比較すると、2か月弱の間に27%もの急伸だ。同じ期間に日経平均は2万3486円から2万1591円まで8%下げているだけに、まさに逆行高と言ってよさそうだ。
ここへきて、はやされているゼンショーHD株ではあるが、ゼンショーHDのような外食産業にとってこのところ、経営上の良いニュースはあまりなかった。人手不足による賃金上昇や食材価格の高騰に歯止めがかからず、これら外部要因は業績を押し下げる要因でしかなかった。ゼンショーHDも、このままではもちこたえられないと判断し2017年11月29日、「すき家」の商品の値上げに踏み切ったのだった。
輸入食材の調達コスト低下
値上げは牛丼並盛を291円(税込み、以下同)から350円に引き上げた2015年4月以来、約2年半ぶり。すき家は今回の値上げの理由を「米国産牛肉の牛丼用部位の価格が前年同期比で42%上昇し、米の価格は前年同期比で9%上昇、パート・アルバイトの募集時平均時給は前年同期比で2.2%上昇している」と訴え、理解を求めた。ただ、客足が遠のく影響を考慮し、牛丼並盛の価格は350円で据え置き、大盛りを10円値上げし480円、特盛を50円値上げし630円とし、セットメニューを最大40円値上げするという形をとった。
この戦略が奏功し、すき家の既存店売上高(前年同月比)は17年12月が5.5%増、18年1月が7.5%増、2月4.9%増となった。店舗の賑わいによって18年のゼンショーHDの業績は増収増益を見込むこととなった。さらに、外国為替市場の円高・ドル安によって輸入食材の調達コスト低下で採算改善をも期待する投資家の買いにより、株価が上昇したというわけだ。
この間、事業の構造や環境が似ている吉野家HDや松屋フーズも株価が上昇した。全体として日本株に勢いはないが、投資家の物色意欲は衰えていないようだ。