中国と北朝鮮の国営メディアは2018年3月28日、北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩委員長が習近平国家主席の招待を受ける形で、3月25日から28日にかけて中国を非公式訪問したと報じた。ここ数日、北京では特別列車と大規模な車列が目撃され、正恩氏が訪中しているとの観測が出ていた。
正恩氏は3月26日に北京・人民大会堂で習氏と会談。新華社通信によると、正恩氏は朝鮮半島の非核化は「金日成主席、金正日総書記の遺訓」だとして、南北首脳会談や米朝首脳会談に意欲を見せた。ただ、北朝鮮側の報道ではこうした核や首脳会談に関することは全く報じられていない。北朝鮮にとっては、首脳会談を前に、中国の「後ろ盾」復活を印象付ける狙いがあるとみられるが、核問題をめぐる中朝の温度差はかえって浮き彫りになったとも言えそうだ。
習主席「朝鮮半島非核化の目標は堅持」
正恩氏にとっては、12年4月の最高指導者(第1書記、後に委員長)就任から初めての外遊。李雪主(リ・ソルジュ)夫人も同行した。北朝鮮の最高指導者が訪中したのは11年5月の金正日総書記以来、約7年ぶり。新華社通信によると、習氏は今回の訪中を「特別な時期で非常に重要」だと評価。習氏は、
「18年に入ってから朝鮮半島では前向きな変化が起こっており、中国は北朝鮮による重要な努力を高く評価する」
とする一方で、
「朝鮮半島を非核化する目標は堅持する」
と述べたという。これに応える形で正恩氏は、
「緊張を緩和し、和平会談を前進させようという北朝鮮のイニシアティブによって、朝鮮半島情勢は好転しつつある」
などと現状認識を披露。その上で、非核化や南北・米朝首脳会談について前向きな発言を繰り返した。
「金日成主席、金正日総書記の遺訓に沿って、朝鮮半島の非核化に尽力するというのが我々の一貫した立場だ」
「北朝鮮は、南北関係を和解と協力の関係に変え、首脳会談を開く決意だ」
「北朝鮮は、米国とぜひ対話し、首脳会談を開きたい」
「韓国と米国が、静かで安定した雰囲気を作り、平和実現のための措置を同時に行って我々の努力に善意で応じれば、朝鮮半島の非核化問題は解決可能だ」
北朝鮮側で記事になった正恩氏の発言は訪朝要請のくだりだけ
一連の正恩氏の核関連の発言は、すべて新華社通信によるものだ。一方、朝鮮中央通信による中朝首脳会談の報道では、朝鮮半島情勢について
「朝中両党、両国の最高指導者たちは、朝中親善関係の発展と朝鮮半島の情勢管理問題をはじめ、重要な事案について意見を交換した」
と簡単に触れ、習氏が
「最近、朝鮮半島の情勢で肯定的変化が現れているのは金正恩委員長の戦略的決断と朝鮮の党と政府が傾けた努力の結実であると述べた」
とあるのみ。正恩氏の発言については
「党と政府の名義で習近平主席が便利な時期に朝鮮を公式訪問することを招請し、招請は快く受諾された」
と紹介されただけだった。
正恩氏は3月5日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使と会談した際、南北・米朝首脳会談や非核化の意欲を伝えたとされる。ただし、これらを発表したのは韓国政府や米国政府で、北朝鮮メディアは沈黙を守っている。