消えない民間金融機関の懸念 ゆうちょ銀 「通常貯金の限度額撤廃」論議

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政治的判断も

   ただ、これが「自然体」での結果ではないとの指摘もある。ゆうちょ銀が資金集めに苦労しているというより、むしろ資金が集まり過ぎるのを避けようと、意図的に抑えたのではないかというのだ。その理由が日銀の超金融緩和、超低金利、マイナス金利政策。ゆうちょ銀は巨額な資金の運用に苦慮しているのが実態で、だぶついた資金を、日銀の当座預金に置いておく「ブタ積み」が10兆円にも達する。これにはマイナス金利が適用され、「ペナルティー」が課される。単純計算で年間100億円もの損失を垂れ流している計算になる。コストをかけて貯金を集めても意味がないという判断というのだ。

   もう一つ、地域金融機関との正面衝突を避けたいとの政治的判断もあるといわれる。というのも、ゆうちょ銀は地域経済活性化に貢献するためとして、2016年度から地銀などと連携し地域活性化ファンドに出資しており、その数、全国で10ファンドになる。だからこそ、がむしゃらな貯金集めは控えているということだ。

   今回、日本郵政が定期・定額貯金を含む限度額の「完全撤廃」を求めなかった背景にも、こうした地域金融機関への配慮もあるといわれる。

   そうはいっても、地銀や信金などは、通常貯金の限度額撤廃だけでも「限度額の規制があるがためにゆうちょ銀を使っていなかった取引先の中小企業が、代金決済用口座をゆうちょ銀に移す可能性がある」ことなどを懸念している。兆円単位で資金が動けば、影響は計り知れない。

民間銀行側の反発は簡単に収まりそうになく、議論はなお、もつれそうだ。

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