トヨタ「ベア額非公表」の副作用 春闘「共闘崩壊」の起点に?

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「水準感」が分からないまま交渉することに

   また、トヨタ本体を頂点とするグループ内のピラミッド構造で、賃上げ額でもトヨタ本体がリードする形になると、グループ内の格差はますます広がってしまう。ここ数年は「格差解消」が重要なテーマの一つとなっていた。トヨタ本体を気にせずに、グループ会社の労使が会社の将来を真剣に考え、各社の実力ベースの回答を引き出す効果があるなら、ベア非公表にも意味があるのかもしれない。

   しかし、非公表は副作用も大きい。最大の問題は共闘の力が薄れることだ。非公表がトヨタ本体のみにとどまれば、まだ傷は浅いが、日産自動車も、ホンダも、マツダも――と広がっていけば、それぞれ「水準感」が分からないまま交渉することになる。

   自動車業界は国内産業を牽引し、春闘においても相場形成の役割を担っている。非公表が自動車業界だけにとどまらず、電機や鉄鋼、小売りなど、幅広い業界に広がれば、交渉はまったくの手探りとなり、労働組合全体の弱体化が一層進みかねない。

   自動車産業全体の労組でつくる自動車総連の高倉明会長は記者会見で、「共闘という観点で問題があった」と非公表を批判した。それでもトヨタは2019年以降も非公表を続ける方針だ。18年春闘は、「共闘崩壊の起点だった」と将来、評価されるのかもしれない。

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