『君たちはどう生きるか』の著者・吉野源三郎はどういう人だったか、岩波書店の山口前社長に聞く

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ゲラを返すと真っ赤になって戻ってくる

――『君たちは・・・』や『職業としての編集者』を読むと、文章がとても滑らかです。短時間でさっと書いているように思えます。

山口 実際には推敲に推敲を重ねる人でした。とにかく原稿を手放さない。やっとできたゲラを本人に返すと真っ赤になって戻ってくる。『職業としての・・・』は生前に出す予定だったのですが、間に合いませんでした。逆に言えば軽々には書いていない。読みやすく、わかりやすいものにするために身を削っていました。これは岩波茂雄と似ています。吉野さんは岩波茂雄の秘書のような立場だったので、岩波が書く原稿の草稿づくりを担当していたのですが、書いては直される、直したものを渡すとまた直される、というやり取りを7~8回していたそうです。

――『君たちは・・・』の突然のリバイバル。吉野さんは今ごろどう思っているでしょうか。

山口 もちろんびっくりしているでしょうね。時代は変わっても人間というものは変わらない、俺の言った通りだろうと言っているかもしれません。人間がどう生きるかというテーマは不変だと。そしてなぜ今なぜ再び読まれるのか、ご自身で分析を始めるのではないでしょうか。延々としゃべると思います。吉野さんの兄貴分に当たる岩波の小林勇・元会長は、吉野さんのことを「説教院殿国際情勢憂慮大居士」と冷やかしていたそうです。
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