米玩具販売大手の「トイザラス」が経営再建を断念し、破産することになった。アマゾン・ドット・コムをはじめとするネット通販に吹き飛ばされた格好だ。トイザラスのアジア事業を管轄する合弁会社傘下の日本法人「日本トイザらス」は営業を続けているが、影響はないのだろうか。
米トイザラスは2017年9月、総額約52億ドル(約5500億円)の負債を抱え、米国とカナダの事業を対象に、米連邦破産法11条の適用を申請した。日本の民事再生法に相当するもので、要は、債務減免などで身軽になってスポンサーを見つけようとしたのだ。しかし、結局、再建の見通しが立たず、18年3月14日、米国内の全735店を閉鎖し、米国事業を清算すると裁判所に届け出たことを発表した。
米国ではネット通販と量販店の挟み撃ちに
米トイザラスは1948年創業で、80年代には「カテゴリーキラー」、つまり、特定の分野に特化した低価格販売で攻勢をかける「勝ち組」として脚光を浴びた。しかし、ウォルマートやターゲットなど大型量販店の安値攻勢との競争で疲弊。2005年にペインキャピタルやKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)などの投資会社に買収され、再建に取り組んだが、ネット通販の勢いが増して量販店と挟み撃ちにあう格好に。業績は下り坂を転げるように不振続きで、直近では5年連続減収、4年連続最終赤字に陥っていた。特に昨17年秋以降の再建では、年末商戦に期待したが、巻き返すどころか、前年よりさらに売り上げが落ち込み、債権者らとの協議が行き詰まった。経営危機を受けてメーカーや卸が商品の納入を減らしたことも不調の要因とされ、これが致命傷になった形だ。
米国事業清算で3万8000人の雇用が失われるとされるが、米国内の店舗のうち業績の良い約200店をカナダ事業と一緒に売却することで複数の買い手候補と交渉中という報道もある。
では、日本法人である「日本トイザらス」(川崎市)はどうなるのか。米トイザラスが勢いに乗って世界に進出する一環で、1989年に設立され、91年に茨城県阿見町に「トイザらス」1号店をオープン。折から、大規模小売店舗法(大店法)の規制緩和が日米経済摩擦の焦点の一つになり、トイザらスは、その象徴としても注目された。
店舗は現在、「ベビーザらス」を含め約160店舗(併設店を含む)あり、米国本社破綻以降も平常営業している。これからどうなるかを展望するには、出資形態をみる必要がある。
アジア事業統括会社の売却先の意向次第?
それはちょっと複雑で、株主は特別目的会社のティーアールユー・ジャパン・ホールディングス・エルエルシー(TRUJ)1、TRUJ2の2社。2000年代後半、家電量販店による玩具販売やネット通販の台頭に押されて日本トイザらスの販売が低迷し始めたことを受け、米トイザラスは09年にTOB(株式公開買い付け)で日本トイザらスを非公開化し、その際に受け皿として設立したのがTRUJ1・2。この2社は現在、合弁会社のトイザラス・アジア・リミテッド(香港)の傘下にあり、米トイザラスはアジア・リミテッドの85%を支配するという形で日本トイザらスの経営権を握っている。
米トイザラスが破綻しても、日本トイザらスは米国と別法人で、仕入れ、資金繰りその他の企業活動を独自に行っているから、これまで通り営業していくことになる。ただ、米トイザラス清算の過程で、保有資産としてのアジア・リミテッド株は売却されることになるだろう。日本の事業が第三者の手に渡るということだ。
日本トイザらスの価値はどれ程なのだろう。巨先に書いたTOBによる資本関係の再編が実施され、TRUJ1・2が株主になった後、中国、東南アジア地域のトイザラス再編に伴い、TRUJ1・2はアジア・リミテッド傘下に組み込まれ、現在に至るが、家電量販店やネット通販との競争の中で、日本トイザらスの対応は米トイザラスより早かったとも評される。地域の事情に合わせて一部店舗を小型化するなど、きめ細かい対応でお落ち込みを最小限に抑え、店舗数も160店前後をキープしている。それなりの優良資産といえそうで、米通信社などは、関係者の話として、トイザラスのアジア部門の価値は10億ドル(約1060億円)前後との見方を伝えている。買い手に関しては中国の投資会社などが浮上しているとの報道もある。
日本での事業は基本的に現状のまま継続されるとみられるが、トイザらスの看板が変わることはないのかなど、買い手次第ということになる。