「メタボ」のこと、誤解しているかも!? 生活習慣病の「トリプルリスク」にご用心

提供:トリプルリスクを考える会

   「高血圧」「高血糖」「高血中脂質」――。仮に健康診断でそんな診断結果が返ってきたら、アナタはどうするか。食事の栄養バランスに注意を払ったり、家の周りでランニングをしたり、といった生活習慣の見直しに努める人は問題ないが、ついつい忘れてしまう人も多いことだろう。

   だが、それでいいのだろうか?実は血圧と血糖、血中脂質の3つは、どれか1つが悪くなると残り2つも悪くなる危険性をはらんでいる。またの名を、生活習慣病の「トリプルリスク」というのだ。

  • 生活習慣病の「トリプルリスク」
    生活習慣病の「トリプルリスク」
  • 生活習慣病の「トリプルリスク」

狭心症や心筋梗塞を引き起こす可能性も...

   「糖尿病の方は、高血圧とか、高中性脂肪になっている方が多い」。「トリプルリスクを考える会」のメンバーで、岡部クリニックの岡部正院長は2018年2月27日、都内で開いた「トリプルリスク啓発キックオフイベント」でそう述べた。

岡部正院長
岡部正院長

   同会は2月26日、トリプルリスクの正しい知識と対処法を紹介し、健康的な生活習慣づくりを呼びかけるために発足した。

   岡部氏によると、糖尿病患者の高血圧合併率は約70%(男性65.7%、女性65.9%)で、高中性脂肪の合併率も約40%(男性41.4%、女性46.3%)にのぼる(いずれも厚生労働省の糖尿病実態調査2002年版より)。

糖尿病患者の合併率は...
糖尿病患者の合併率は...

   高血圧、高血糖、高血中脂質。この3つはいずれも血管の動脈硬化になる危険因子で、1つが悪くなれば、残り2つも悪くなる可能性があるという。

   いったい、どのようなメカニズムで結び付いているのか。岡部氏によれば、内臓脂肪の蓄積は、血糖値を下げるインスリンの働きを低下させる。すい臓は血糖値を抑えようと、インスリンをさらに多く分泌するが、結果的に血圧は上昇、血液中の中性脂肪が増えるのだ。

トリプルリスクが大病を引き起こす可能性も
トリプルリスクが大病を引き起こす可能性も

   トリプルリスクが2つ、3つと重なれば、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、認知症などの大病にかかる可能性も高まってしまう。実際、岡部氏が示した以下のグラフによると、リスク因子を持たない人が虚血性心疾患を発症するリスクを「1」とすれば、3~4つの因子を抱えた人の発症リスクは「35.8」に達した。

リスク因子が2つ、3つと重なると...
リスク因子が2つ、3つと重なると...

   現状では、こうしたトリプルリスクの危険を知らない人が多い。同会が発足前、インターネットで30~60代の男女1200人を対象に実施した「現代人の健康と食生活に関する調査」によると、トリプルリスクの「内容まで知っていた」人はわずか5.2%。ただ内容を聞いて対策を取りたいと思った人は、71.5%にのぼった。

「内容まで知っていた」人は5.2%
「内容まで知っていた」人は5.2%

患者数が増えている「4つ」の理由

   厚労省の患者調査2014年度版によると、高血圧性疾患の患者数は05年比で129%、糖尿病は同128%、高脂血症(脂質異常症)は同135%だった。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が提唱されてから、約15年。高血圧と高血糖、高血中脂質が生活習慣病を引き起こす可能性があることは、よく知られているはずだが、なぜ患者数は増えているのか。

   それには4つの理由があると、岡部氏は考えている。まず1つは「メタボに対する理解の低さ」だ。

   同会の調査では、メタボの診断基準が体重や腹囲、またはその両方など、「太っている」ことにあると考えている人は、全体の約5割にのぼった。だがメタボとは本来、「内臓脂肪が多くて、高血圧と高血糖、高血中脂肪のうち2つを満たした人のこと」を指す。

メタボをどう認識しているか
メタボをどう認識しているか

   2つめは、「メタボ診断基準の落とし穴」。メタボ検診ではまず、腹囲を計測することになっている。基準を超えていれば、血圧と血糖、脂質異常のどこに問題があるか調べるわけだ。だが岡部氏によると、「ウエストが細くても、高血圧や高血糖になる人はいる」。やせているからといって安心できるものではないという。

   3つめは、「血圧・血糖・血中脂質に対する意識と実態の乖離」。同会の調査では、「血圧と血糖、血中脂質が気になるか?」と確認したが、過半数の53.0%は「1つ以上気になる」と答えていた。一方、そのうち1つ以上ケアしている人は32.1%、3つともケアしている人は10.8%のみ。ケアの重要性は認識しているものの、実行するのは難しいようだ。

3つともケアしている人は10.8%
3つともケアしている人は10.8%

   そして、最後の1つは「健康診断では分からない疾患リスク」。人間ドックや健康診断を受ける際、食事を節制する傾向が高い。それはあくまでベストな状態で測定した結果に過ぎず、隠れているリスクまで把握するのは難しいという。

これが、トリプルリスクの解消法だ

   では、トリプルリスクを解消するためには、どうすればよいのか。2月27日のキックオフイベントでは、同会メンバーの料理研究家で、管理栄養士の岩崎啓子氏が映像で出演。食生活の観点から、トリプルリスクの解消法を解説した。

映像で出演した岩崎啓子氏
映像で出演した岩崎啓子氏

   岩崎氏は「定期的な運動はもちろんですが、日頃の食生活の中で生活習慣を改善する必要があります。中でも塩分、糖分、脂肪分の3つを同時にケアしなければなりません」と話した。

   まず、基本は皿を増やすこと、つまり副菜を追加することだとし、「栄養のバランスがとりやすくなり、全体的なボリュームもダウンしやすくなります」と説明。

トリプルリスクの解消法とは?
トリプルリスクの解消法とは?

   その上で「応用編」として、「調味料の使用量を減らすこと」と「アクセントをつけること」の2つを挙げた。

   「調味料」の面では、塩と砂糖、油をバランス良く、なるべく仕上げの段階で使うようにする。ゆでるより蒸すようにするなど、素材の味を最大限に生かすことも重要だ。「アクセント」の面では、酢や香辛料、しょうゆ、みそで料理に変化を加えたり、サプライズの食感を演出したりして、長続きさせることを重視するべきだという。

   トリプルリスクに関する詳細は、「トリプルリスクを考える会」の公式サイトから。同会は2018年4月以降、青森と長野、那覇の3か所で「トリプルリスク啓発 3都市プロジェクト」の活動を開始する予定だ。

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