解明の鍵は、財務省での国有財産業務の位置づけ
特に安倍政権には、忖度どころか、妨害さえもありえる。これは、実際にあったことだが、消費増税のスキップを安倍政権が企てると平然と妨害した。
消費増税は財務省の悲願である。2014年4月から消費税率は5%から8%へと引き上げられたが、8%から10%への再引き上げについて、安倍政権はこれまで2度スキップした。1度目、再引き上げは15年10月とされていたが、14年11月の総選挙で争点となり、17年4月からとされた。2度目、16年6月のG7サミット後、17年4月からだったのが19年10月とされた。
2014年11月30日、フジテレビ番組において、安倍首相は「財務省が『善意』ではあるが、すごい勢いで(消費再増税にむけて)対処しているから党内全体がその雰囲気だった」と、財務省の工作を明らかにしている。消費増税をやらない安倍政権を、決裁文書書き換え当時に財務省は苦々しく思っていたのは事実だ。このような安倍政権に忖度したら、財務省内での出世に差し支えるというのが実情に近い。
ならば、佐川氏の個人の話かというと、財務省内で理財局だけなのか、財務省全体なのかは、今後の捜査でもないと分からない。
その解明の鍵を言えば、財務省での国有財産業務の位置づけだ。財務キャリアでは、少なくとも課長補佐までに経験する業務ではない。国会答弁作成はノンキャリアである。佐川氏は理財局長になるまで国有財産業務をやったことがなく、ノンキャリアの答弁をよく理解できずに国会答弁した可能性がある。
なお、決裁文書書き換えの首謀者は紙・縦割り文化のオールド世代確実だ。紙で改ざん出来ても電子決裁や電子ファイルに修正痕跡が残るのを意識していない。頭隠して尻隠さずだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「これが日本経済の邪魔をする『七悪人』だ!」(SB新書)など。