日本年金機構からデータ入力を委託されていた会社が、契約では禁止されているにもかかわらず、個人情報の入力作業を中国の業者に任せていたことが明らかになった。
機構は2018年初めには委託先に監査を行って事態を把握していたが、3月19日にNHKが報じるまで事実関係を明らかにしてこなかった。
「個人情報等の流出のおそれはないと判断」
受け取っている年金額が65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上ある人は、所得税が年金支給額から源泉徴収される。所得税の控除を受けるためには、機構から送られてくる「扶養親族等申告書」を記入して返信する必要がある。
機構の発表や機構の水島藤一郎理事長が2018年3月20日の記者会見で行った説明によると、この「扶養親族等申告書」の入力プロセスで問題が起きた。機構から委託された企業は、扶養親族等申告書から漢字氏名、かな氏名を切り出して(トリミングして)中国・大連の再委託先に送信し、データ入力させていた。件数は「現状数字を持っていない」とした。
こうした機構と委託企業の間では、個人情報を扱ったりする主体的業務の再委託や、業務を国外で行ったりすることを禁止していた。
機構の水島藤一郎理事長は2018年3月20日の参院予算委員会で、
「昨年の年末から事態が把握され、年初、機構で監査を入れた、その結果、海外に委託しているおそれがあることが判明した。それにともなって機構では1月6日に特別監査を入れ、その時点で中国に委託していることを把握した」
などと説明。中国の再委託先の業者の監査を行った結果として、
「個人情報等の流出のおそれはないと判断している」
と説明した。
データ入力漏れや入力間違い→支払額少なく
中国への再委託の件とは別に、この委託先業者はデータ入力漏れや入力間違いを国内の作業で多発し、年金の支払額に影響が出た。
本来ならば、「扶養親族等申告書」を17年12月11日までに提出していれば、控除分は2月15日の年金支払いには反映できるはずだった。ところが、入力漏れが8万4000人分、入力ミスが31万8000件分あった。機構では影響範囲の精査を進め、順次「取りすぎ」分の還付を進める。
加藤勝信厚労相は参院予算委員会で
「本当にその時間(締め切りまでに扶養親族等申告書を)に出していただいたにもかかわらず、そうなったことは誠に遺憾」
「委託業者の入力漏れ、入力誤りによりご迷惑をおかけした方々に対しては、まずは正しい年金徴収税額に基づいた年金の支給を早急に対応し、合わせておわび状を送付する」
などと陳謝した。