ルポライターの名探偵・浅見光彦シリーズで多くのファンをつかんだ人気作家、内田康夫(うちだ・やすお)さんが2018年3月13日、敗血症のため東京都内で死去していたことが分かった。83歳だった。「浅見光彦記念館」のホームページが公表した。
生涯で200作近い作品を刊行し、発行部数は1億冊を超えていたという。作品がしばしばテレビドラマ化されていたこともあり、近年、お茶の間で最も親しまれたミステリー作家の一人だった。
40歳の半ば過ぎから作家に
東京都北区の出身。テレビやCM制作の仕事を経て40代半ば過ぎから推理小説も手掛けるようになる。1982年の「後鳥羽伝説殺人事件」で、警察幹部を兄に持つルポライター、浅見光彦が事件の謎解きで大活躍する主人公として初登場。2017年の「孤道」(未完)までにシリーズ114冊を書き上げた。テレビ各局でシリーズドラマ化され、辰巳琢郎、沢村一樹、速水もこみち、榎木孝明、中村俊介らの人気俳優が演じたこともあって、放送を楽しみにするファンが多かった。
このほか「信濃のコロンボ」、「岡部警部」などのシリーズや歴史小説などもあり、旅情ミステリーにとどまらず、幅広い作品を手がけた。08年には、推理小説の発展に貢献のあった作家らに贈られる日本ミステリー大賞を受賞している。
13年に朝日新聞「be」が行った「私が好きなミステリー作家」の読者アンケートでは、内外の有名推理作家の中で、9位の横溝正史、10位の森村誠一氏に続いて11位にランクインしていた。
早くから軽井沢に居を移し、同町には浅見光彦記念館がある。02年に出身地の東京と北区に「北区内田康夫ミステリー文学賞」を創設されている。