食品スーパー、ファミレス、ハンバーガーショップ、アパレル...。外食、小売り産業などで近年、客が自ら会計、精算を済ませる「セルフレジシステム」の導入が進んでいる。昨今の人手不足を背景とする人件費の上昇を解消する狙いがある。
そんな中、イオングループの持ち帰り弁当チェーン「オリジン弁当」(551店舗)を運営するオリジン東秀(東京都調布市)の「セルフレジシステム」に、インターネットの一部で注目が集まっている。
「真に導入されるべきはテイクアウト系飲食店」
きっかけはあるネットユーザーのSNSだった。自身のツイッターで2018年3月7日、オリジン東秀が展開する店舗で撮影したとみられる「セルフレジシステム」の写真を掲載し、「オリジン弁当、レジが自動化されていて、店員が現金触らなくていいシステムになっていてすごいなー」と投稿したのだ。
同社の店舗では通常、従業員が注文に応じ、弁当や定食などを調理。客は従業員と金銭を交換する形で、レジで会計、精算を済ませる。だが「セルフレジシステム」を使えば、従業員と直に触れ合う必要もなくなる。先のユーザーはそのため、衛生的にも安心できるとして気に入ったようだ。
この投稿をめぐっては、ツイッターで「お金触らないでいいシステムには、よくぞ改善してくれたと賛辞を送りたい」「これだけでもかなり効率化できるし、衛生的だし、内部統制としても有効よね」と衛生面を評価する声が続出。もちろんレジの効率化に寄与するとして、「真に導入されるべきはテイクアウト系飲食店」との声も上がった。
厳密に言うと、「セルフレジシステム」には2種類の形態がある。客が商品のスキャンから会計まで自身で担当する「セルフレジ」と、会計作業のみを担当する「セルフ精算レジ」だ。後者は、スキャンは店員が担当する。同社のシステムは一体、どちらなのか。
J-CASTニュースの取材に、同社広報グループの担当者は「2016年9月23日にオープンした店舗から『セルフ精算レジ』を導入している」と明かした。弁当と総菜、サラダに加えイートイン専用の定食メニューを提供する「Origin」の全店舗に、働く女性をターゲットとする「キッチンオリジン」の一部店舗を合わせた、計80店超に「セルフ精算レジ」を導入済みだという。
導入の目的について、同担当者は「来店客の会計の待ち時間を縮めるとともに、衛生面の観点からも従業員を調理に専念しやすくすることで弁当などの提供時間を早めることです」と明かした。
「最初は、使い方に戸惑われる方も見受けられますが、衛生的でよいという声をいただくこともございます」
かえって効率的でなくなる可能性も...
オリジン東秀の「セルフレジシステム」導入に、市場調査会社「エヌピーディー・ジャパン」(東京都港区)の東さやか・フードサービスシニアアナリストも「理にかなっているのではないか」と太鼓判をおす。その上で、
「弁当・惣菜店では昨今、市場規模の縮小、客数の低減が進んでおり、人手不足に歯止めがかからず、人件費が上昇しています。店側はセルフレジの導入で人件費を抑えられますし、消費者も清潔感を感じられるでしょう」
と説明した。
ただ、外食、小売り企業がこうして「セルフレジシステム」を導入したからといって、必ずしも功を奏すとは限らない。東氏が例に挙げるのは、「ジョナサン」や「ガスト」などのファミレスを展開する外食大手の「すかいらーく」だ。2017年6月までに21店舗で試験的にセルフレジを導入している。
「ファミレスの客が本来、求めているのは『おもてなし』です。接客やコミュニケーションが重視される傾向にあるため、セルフレジの導入が客の満足度に影響を及ぼしたようです」
新日本スーパーマーケット協会がまとめた2017年版の「スーパーマーケット年次統計調査 報告書」によると、セルフ精算レジまたはセルフレジのいずれかを設置している企業の割合は48.6%となっている。セルフ精算レジの設置率は42.1%で、セルフレジの設置率(一部店舗含む)16.5%を上回っていた。
セルフ精算レジとセルフレジの違いは、店舗の従業員がバーコードを読み取る作業を担当するかどうかだ。東氏によると、たとえばスーパーマーケットなどでセルフレジを導入した場合、客はバーコードのスキャンに手間取り、かえって効率的でなくなる可能性もあるという。
「デメリットを相殺するメリットがあるか。これが大事です」