SUBARUの社長交代 「無資格検査」引責人事ではない理由

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   SUBARU(スバル)の吉永泰之社長(63)が最高経営責任者(CEO)のまま代表権のある会長に就き、社長に米国現地法人会長の中村知美・専務執行役員(58)を充てるトップ人事を決めた。2018年6月下旬の株主総会を経て正式に決定する。3月2日、発表した。

   吉永氏はCEOを続けるように、無資格検査問題を受けた「引責人事」ではない。自動車業界が大きな変革期を迎えているなかで、なお吉永氏のリーダーシップが必要という判断と見られる。吉永氏の在任期間中、同社は右肩上がりの成長を続けてきたが、無資格検査問題の発覚と時を同じくして、潮目が変わりつつあるようにもみえる。新社長に就く中村氏がどんな成長戦略を描くのか、注目されそうだ。

  • SUBARUの吉永泰之社長(2017年10月25日撮影)
    SUBARUの吉永泰之社長(2017年10月25日撮影)
  • SUBARUの吉永泰之社長(2017年10月25日撮影)

「正しい会社推進部」と「コンプライアンス室」を新設

   吉永氏は2011年6月に社長に就任。「走りの良さ」と安全運転支援技術「アイサイト」などの安全性能を前面に打ち出す戦略が当たった。就任前の11年3月期に約66万台だった世界販売台数は、17年3月期には約106万台へと急拡大。1兆5800億円だった連結売上高は3兆3300億円に膨らみ、売上高営業利益率もここ数年はコンスタントに2ケタをたたき出すなど、国内完成車メーカーきっての高収益企業に成長した。17年4月には「富士重工業」から「SUBARU」へと社名を変更。グローバルな完成車メーカーとして、新たな歩みをはじめていた。

   順風満帆にみえたスバルにほころびが見えたのが、17年秋に発覚した無資格検査問題だ。無資格者が検査に携わっていたほか、試験官が社内試験会場で解答を教えるなど、ずさんな管理・運営が発覚した。17年12月には、完成検査の際に自主的に実施している燃費測定のデータに改ざんの疑いがあると発表。吉永氏は18年3月2日の社長交代記者会見で、「データの書き換えは実際に行われてきたと捉えている」と事実関係を認めた。「基準値の範囲内に収まっており、カタログ値が変わるわけではない」と説明したうえで、「大きな問題で、反省しなければならない」と述べた。

   無資格検査は30年以上前から常態化していることが判明しており、吉永体制化での急成長が直接の要因ではない。だが吉永氏はかねて「実力が伴っていない」と述べていた。無資格検査やデータ改ざんを許す「甘い」企業風土のことだ。吉永氏は「一連の問題から逃げずに対処することが責任」とCEOに残る理由を説明。4月1日付で「正しい会社推進部」と「コンプライアンス室」を新設し、陣頭指揮を執ると明らかにした。

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