「『佐川事件』の真相究明ということがまず第一でありますから」――自民議員からこんな発言が飛び出したのは、野党不在のまま行われた2018年3月15日の国会だ。
森友学園への国有地売却に関する財務省文書が書き換えられたこの問題をなんと呼ぶかは、発言者の政治的立場などによって揺れがある。にわかに国会の場に登場した「佐川事件」なるフレーズには、はたしてどのような思惑があるのだろうか。
麻生財務相を「追及」する中で...
参院財政金融委員会は15日、改ざん当時の理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官の招致を求め、野党が欠席を続ける中行われた。前日14日に続いて質問に立ったのは西田昌司・参院議員、今後の公文書の取り扱いなどについて麻生太郎財務相を「追及」した。
件の発言が出たのはその締めくくりの場面だ。
「引き続きこの問題は、『佐川事件』の真相解明ということがまず第一でありますから、早急にこの議会の方に報告していただきますように、重ねてお願いしておきます」
一連の問題を報じる記事の見出しでは、「改ざん問題」(朝日新聞)「森友文書改ざん」(毎日)「『森友』書き換え」(読売)「森友改竄(かいざん)」(産経)といったフレーズが使われることが多い。そもそもの土地取得の経緯も合わせて「森友事件」、あるいは首相夫人の安倍昭恵氏の責任を追及する立場から「アッキード事件」とする向きもある。
対して「佐川事件」という呼称は、西田氏の発言以前にはほとんど語られた痕跡がない。
この発言に先立つ14日、与党は拒んできた佐川氏の証人喚問に応じる方針を固めている。さらに16日の衆院財務金融委員会では、太田充理財局長が、佐川氏は一連の改ざんを「知っていたと思っている」と回答するシーンも。政権・与党側が、佐川氏を突き放すような動きが続いている。