日本レスリング協会強化本部長で至学館大学レスリング部監督の栄和人氏が伊調馨選手にパワハラをしていたとする告発状に対し、谷岡郁子・至学館大学長(63)が会見を開いて反論した。しかし、その発言内容などから「逆効果だった」との指摘も相次いでいる。
ノンフィクション作家の吉永みち子氏(68)は「逆にこういう体質の中で伊調さんは苦労していたのかなと思ってしまう」と吐露。元NHKアナウンサーの堀尾正明氏(62)からは「栄さんにもパワハラを働いていた気がしてならない」という意見も出た。
「監督は小心者だから、臆病だから、メンタルが弱いから、チキンハートだから」
谷岡学長は2018年3月15日の会見で、告発状に対して「訳の分からない風評被害」などと真っ向反論。学生、特にレスリング部には「心無いメール」が寄せられていることから「これ以上甘受することはできない」と会見の背景を説明した。
「私の怒りは沸点に達しました。もう我慢できない。私は本当に怒っています」と明言した通りの会見となった。現役続行に迷いをのぞかせる伊調選手を「選手でない人」「五輪をめざすはずがない人」と呼び、「(東京五輪での)5連覇を阻止するということが存在できるでしょうか」と告発内容に苦言を呈した。
栄氏への言及も多かった。伊調選手は練習場が定まっていないとされるが、谷岡学長は至学館大の道場が栄氏個人のものでなく、「私が使わせると言えばいつでも使うことができる」として、「その程度のパワーしかない人間なんです、栄和人は」と発言。「パワーのない人間によるパワハラが一体どういうものであるか、私には分かりません」とパワハラを否定した。
また、学生に話を聞いたとして「監督は小心者だから、臆病だから、メンタルが弱いから、チキンハートだからと、言葉は違いましたが、監督がボロボロになるのではないか、病気になるのではないかと、(選手たちは)深く心配しておりました」とも述べ、栄氏を擁護している。
だがこれらの谷岡学長の語調や言い回しは、逆に「パワハラが存在している」という印象を与えてしまったようだ。元NHKアナウンサーでスポーツ担当歴が長かった堀尾正明氏は、16日放送の「ビビット」(TBS系)で谷岡学長に対し、
「栄さんの人格とか弱点を公の場で言っていたので、栄さんに対してもパワハラを働いていた気がしてなりません」
と述べている。
「弱い立場であることを強調すればするだけ違和感」
俳優の別所哲也さんも同日の「とくダネ」(フジテレビ系)で、「その程度のパワーしかない人間」などと言ったことに「そういう発言自体が栄さんに対してパワハラになっていないですか」と主張。また、
「画面からあふれるばかりのパワーを彼女(谷岡学長)から感じてしまうから、そのパワー自体が受け手側にハラスメントと捉えられてしまう」
と憂慮した。
タレントの本上まなみさんは同日の「スッキリ」(日本テレビ系)で「学長の口調にものすごく圧を感じます」とし、「栄監督を守るがゆえの発言だと思いますが、栄監督自身をこきおろす発言とか、『その程度のパワーしかない』とか、弱い立場であることを強調すればするだけ違和感を覚えてしまいます」との印象を述べている。
「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)では出演陣が次々に苦言を呈した。元プロ野球選手の長嶋一茂さんは「伊調さんの問題がもっとでかくなってしまうことも含め、こういう会見は収束させるためにやればいいのに、逆になっている。火に油になった」と谷岡学長を非難。ノンフィクション作家の吉永みち子氏は
「おそらく『私が出て収めてやる』という意識があったと思いますが、まったく論理が整理されていなくて、感情が表に出てしまっているものですから、逆にこういう体質の中で伊調さんは苦労していたのかなと思ってしまいます」
と、パワハラを感じたようだった。また、テレビ朝日コメンテーターの玉川徹氏は
「これ、一体何のために会見やったんですかね。少なくともこの会見は至学館にまったくプラスになっていない。マイナスでしかない。失敗の会見だと思います」
と受け止めていた。