財務省による決裁文書改ざん問題は、与党が佐川宣寿・前国税庁長官の国会招致を容認する方針に転じ、国会審議は正常化する見通しになった。その背景には、公明党の人脈を通じて政府・与党が、財務省報告の前から危機感を共有していた可能性もありそうだ。
財務省が改ざんを国会で認めたのは2018年3月12日。だが、国土交通省が改ざん前の文書の存在を財務省と首相官邸に指摘したのは1週間も前の3月5日。石井啓一国交相は公明党の所属だ。公明党は、かなり早い段階で事態を把握していた可能性がある。
3月7日会談で危機感共有か
公明党の山口那津男代表は3月6日の記者会見の時点では、
「捜査に影響がある」などとして改ざんの有無について言及してこなかった財務省の対応を「妥当な対応だと思う」と静観。一方で、自民党の二階俊博幹事長は「(資料を)出せないという事はわれわれも理解出来ない」
と、対照的な反応を見せていた。
翌3月7日には、二階氏と、公明党の井上義久の両党幹事長が会談し、調査結果を早急に国会に報告するように政府に対して求める方針で一致した。実は、国交省の秋元司副大臣は自民党の二階派に所属。石井国交相と同じタイミングで事態を把握し、「親分」の二階氏に報告した可能性もある。そう考えると、3月7日の幹事長会談は、両党間で危機感を共有する場になったとみられる。
安倍首相と菅官房長官は3月6日に報告受けていた
菅義偉官房長官が3月15日の記者会見で明らかにしたところによると、国交省は改ざん前とみられる文書を持っていることを3月5日の時点で官邸に報告していた。官邸側で報告を受けたのは杉田和博副長官で、杉田氏は
「国交省に対し、財務省の調査に対して全面的に協力するよう指示するとともに、合わせて財務省に対して調査を徹底的に行うように改めて指示した」(菅氏)
といい、安倍晋三首相と菅氏は翌3月6日に事態について報告を受けていた。政府・与党の相当数が事態を把握しながら3月12日まで改ざんを認めなかった可能性がある。
この点について菅氏は記者会見で、
「具体的に事実関係を確認できないわけだから、そうした動きがあるということだけ報告を受けた。国交省から先ほど申し上げた(編注:改ざん前の可能性がある)文書の存在を知らされた時点で、財務省によれば、最終的に検察当局の協力を得て文書の確認をできる段階には至っていなかった」
などと反論した。