谷岡郁子・至学館大学長のド迫力会見 「伊調馨さんは選手なんですか?」

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   レスリングの伊調馨選手へのパワハラ告発問題で、加害者と指摘されている栄和人監督が所属する至学館大学(愛知県大府市)の谷岡郁子(くにこ)学長が2018年3月15日、告発内容への「反論会見」を開いた。そこで述べた内容が新たな論議の火種となった。

   練習場が定まっていないという伊調選手に対し、谷岡学長は「必要があるなら私たちはいつでも歓迎」と寛容さを見せる一方、「そもそも伊調馨さんは選手なんですか?」と疑問を投げかけた。スポーツジャーナリストの玉木正之氏は会見を聞き、発言内容に「古い考えです」と眉をひそめる。

  • 谷岡郁子氏(2012年撮影)
    谷岡郁子氏(2012年撮影)
  • 栄和人監督と伊調馨選手
    栄和人監督と伊調馨選手
  • 至学館大学は谷岡郁子学長の名義で3月7日、報道機関に対し、取材等に関して「節度ある活動」を要請する文書を送付している
    至学館大学は谷岡郁子学長の名義で3月7日、報道機関に対し、取材等に関して「節度ある活動」を要請する文書を送付している
  • 谷岡郁子氏(2012年撮影)
  • 栄和人監督と伊調馨選手
  • 至学館大学は谷岡郁子学長の名義で3月7日、報道機関に対し、取材等に関して「節度ある活動」を要請する文書を送付している

「彼女は東京五輪をめざしているのですか?」

   伊調選手は至学館大(旧・中京女子大学)出身で、卒業後の現在は警備会社ALSOK(アルソック)に所属している。谷岡学長は会見で、「もし母校である至学館で練習する必要があるなら、私たちはいつでも歓迎である旨は申しました。栄監督が率いるレスリングチームの道場は彼個人のものではない。私が『使わせる』と言えば、伊調馨さんはいつでも使うことができます」と寛容な姿勢を見せた。また、「その程度のパワーしかない人間なんです、栄和人は。パワーのない人間によるパワハラが一体どういうものであるか、私には分かりません」とパワハラの存在を否定した。

   だが伊調選手に対し、「警察にも太いパイプを持つアルソックの社員であれば、所属元を通してでも練習場所を確保しようと思えば簡単にできたはずではないでしょうか。どうしてアルソックで練習しないのか」と一転して疑問を投げかけた。さらに、

「そもそも伊調馨さんは選手なんですか? そもそも彼女は東京五輪をめざしているのですか?」

と、現役選手であることを疑った。

   その理由を「リオ五輪後、『これからのことは空白だ』という旨を彼女は言っていました。『東京五輪をめざすか分からない、しばらく休みたい』と言ったまま、その考えを変えたことを私どもはまったく知らないからです。アルソックでは今年1月、選手契約から社員としての契約に変わっています。日本レスリング協会でも『広報部に配属されました』とあいさつに見えたと聞いています」と述べる。なお谷岡学長は協会の副会長もつとめている。

   告発状では、伊調選手が練習拠点を出入り禁止にされたとして、五輪5連覇を阻止する策動ではないかと指摘がある。だが、谷岡学長は上記の主張から、

「選手でない人、五輪をめざすはずがない人の5連覇を阻止するということが、存在できるでしょうか。明らかに協会の大スポンサーでもあるアルソックに所属する人の練習場所を抑えてまわるほどのパワーが、栄監督にあるでしょうか」

と、伊調選手を「選手」として認識していないようだった。

「失礼にあたるのではないか」

   伊調選手は2月9日のwebスポルティーバのインタビュー記事で、「今はまだ選手としてやっていくこと、オリンピック5連覇ということに意味・価値を見いだせていないので、漠然と『選手に戻る』ということはありません」と迷いを明かしている。だが同時に「戻るとしたら100%、腹をくくったとき」とも述べ、本格的な現役続行に含みを持たせている。

   スポーツジャーナリストの玉木正之氏は3月15日放送の「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)で、「選手でない人」などと言った谷岡学長に対し「これは古い考えです」と疑問を呈した。その上で、「スポーツ選手はスポーツに専念し、その後で仕事をすると、よくセカンドライフという言い方しますよね。ですが最近はそういう考えをやめ、スポーツも仕事もやるという考え方に変わってきています。それが分かっておられずに、五輪で金メダルを取るほどの選手だから、今はOLを始めたのなら選手はやめたのでしょう、という考えは古い。どんな職業をしている人がどんなスポーツをしてもいいんです」との見解を述べた。

   さらに、三田友梨佳アナウンサーも「『選手なんですか』という質問が気になって」と引っかかった。「確かに伊調選手自身が『東京五輪での5連覇にそれほど価値を見出してない』とか、『(現役を)続けるかどうか考え中』と言っていて、それを踏まえての学長の言葉だったと思います。選手としてのモチベーションが薄れている可能性はあるかもしれませんが、それを決めるのはご本人で、第三者が『選手なんですか?』と言うのはすごく...失礼にあたるのではないかと思います」と思いを述べた。

   また、「私もスポーツを取材していると、いったん競技から距離をおく選手はたくさんいる」とも述べた。たとえば、フィギュアスケートの浅田真央さんは14年ソチ五輪のシーズン後、進退を保留して休養した上で1年後に復帰し、その後約2年間現役を続けた、というケースもある。

   三田アナは谷岡学長の会見を聞き「これを伊調選手自身が聞いたらショックなのではないかと思いました」と沈痛な面持ちだった。

   なお谷岡学長は会見で「今般の(週刊)文春の記事にあるような内容について当然、重大な人権侵害、名誉毀損と考えておりますから、いま訴訟を準備しています」と法的措置を検討していることを明かしていた。

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