財務省による決裁文書改ざん問題で、森友学園が購入しようとしていた国有地について安倍昭恵夫人が「いい土地ですから、前に進めてください」と発言したとする記載に注目が集まっている。仮にこの発言が本当であれば、国有地の売買に昭恵氏が関与していたことを示す傍証になるためだ。
安倍晋三首相は2018年3月14日、発言を否定。ただ、相当な理由がなければ決裁文書に記述は残らないとして、野党側は「どっちかが嘘をついている」と疑念を深めている。
「妻に確認した。『そのようなことは申し上げていない』とのことだった」
昭恵氏の発言とされる文言は、財務省が 3月12日に公表した「普通財産の貸付けに係る承認申請について」と題した特例承認の決裁文書」(15年2月4日、4月30日)の、改ざん前バージョンにある。
具体的には、近畿財務局と森友学園とのやり取りを記した「これまでの経緯」の項目で、14年4月28日に
「なお、打合せの際、『本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは「いい土地ですから、前に進めてください。」とのお言葉をいただいた。』との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)。」
とある。当時は森友学園の理事長だった籠池泰典被告(65)=詐欺罪などで起訴=らが、昭恵氏の名前を利用しようとしていたことがうかがえる内容だ。
安倍晋三首相は、18年3月14日午前の参院予算委員会で、夫妻の関与を改めて否定。
「書き換え前の文書を見ても、私や私の妻が関わっていないということは明らかであろうと思う」
などと述べ、昭恵氏の名前が改ざん前の文書に複数回登場していることについては、産経新聞ウェブサイトの記事を引用しているに過ぎないことや、「籠池氏の発言が書かれているだけだろうと思う」と説明。昭恵氏がしたとされる「いい土地ですから、前に進めてください」発言も、
「妻に確認した。『そのようなことは申し上げていない』とのことだった。もちろん妻が、この学校を作る責任者ではないわけだし、籠池氏との上下関係があるわけでもない。『当然、そんなことは言っていない』ということだった」
などと否定した。
担当者は「かなり説得力があると思ったからこそ決裁文書に残したのでは」
この首相答弁は、国会内で行われていた野党のヒアリングの場にも伝わり、
「関係しているからこそ、昭恵夫人の名前が4回も出てきているのではないか。関係していなかったら、ここに出てこないではないか」
「やっぱり、(決裁文書作成の)担当者が『前に進めてください』という発言は、籠池さんの発言とは言え、かなり説得力があると思ったからこそ決裁文書に残したのではないか」
「どっちかが嘘をついている」
などと反発の声が広がった。