森友学園への国有地売却に関する文書について、財務省がついに「書き換え」を2018年3月12日認めたことで、政界は大揺れとなっている。
この日のワイドショーも一斉にこの問題を大きく取り上げた。各番組のコメンテーターたちも、総じて厳しい発言が相次いだ。
佐川氏の「独断」で書き換えは可能か?
いずれの番組でも大きく扱われたのは、書き換えを命じたのがいったい誰なのか、という疑問点だ。
麻生太郎財務相は12日昼の会見で、理財局の一部職員によって書き換えは行われ、最終的な責任者は当時の理財局長だった佐川宣寿氏(前国税庁長官)との認識を示している。午前中の番組でも、毎日新聞の報道などを元に、佐川氏が関与したとの前提で議論が展開したが、多くのコメンテーターが首をかしげたのは、局長クラスの判断でそのようなことができたのか、という問題である。ジャーナリストの池上彰さんが、
「官僚というと、さらにその上に意向を打診するとか、どうしましょうかと判断を求めることが通常ですから、局長個人では考えられないんではないか」(ワイド!スクランブル、テレビ朝日系)
としたのをはじめ、元大蔵官僚で経済学者の小黒一正氏も、自身の経験も踏まえてこう述べる。
「局長自身でもちょっと考えられない。(中略)私が知る限り、局長ですら、たとえば(事務)次官ですらちょっと難しいんじゃないか」(モーニングショー、テレビ朝日系)
とすれば、当然想定されるのはその上、政治家の関与という話になる。こうした議論に慎重な姿勢を取ったのは、時事通信社特別解説委員の田崎史郎氏だ。
「今の調査の段階では、理財局の誰かがやったというところまでは来ているんです。それについて麻生副総理兼財務大臣も福田(淳一)事務次官も知らなかった、ということになっているんですね。理財局以上の話が、今のところ想像の域を出ない。証拠がないんですよ」
八代氏「こんなことをして何のメリットがあるのか」
そして、もう一つのポイントが「動機」である。佐川局長による国会答弁の内容との「整合性」を保つため、というのが現時点での有力説だが、
「こんなことをして何のメリットがあるのか。佐川理財局長の答弁の整合性を保つことと、いざ発覚した時のダメージ、比べてみれば一目瞭然」(ひるおび!、TBS系)
と弁護士の八代英輝氏がいぶかったように、あまりにリスクの大きな行為に、官僚たちがなぜ手を染めなければならなかったのか、というのは当然の疑問だ。「上」からの圧力を想定するのは、テレビ朝日解説委員の玉川徹氏で、
「問題の本質は、佐川局長が『ない』と言っちゃったことの整合性をとるために、こういう風な偽造をやっちゃったという話ではなくて、なんで偽造をせざるを得ないような答弁をしたのか、ということなんですよ。なんで『ない』と言わざるを得なかったのか」(ワイド!スクランブル)
と、具体的な名前は出さなかったものの、なんらかの政治的な動きがあったことをにおわせる。
対して、元財務官僚としての経歴から複数の番組に出ずっぱりだった、弁護士の山口真由氏は、書き換えは本来ならありえない、と繰り返す一方、
「前代未聞のプレッシャーがかかっているわけですよ。そのときに、ものすごい近視眼的に、賢い人が信じられないようなこと(=書き換え)を犯してしまうということがないかというと、そこは言い切れないと思うんですね」(ひるおび!)
と「現場」の可能性も否定しない。元衆院議員の若狭勝氏も、自身の検事としての経験を元に、こうした「書き換え」は程度の違いこそあれままある、として、
「組織防衛、自己保身、それが本当に極致に至ると、普通は考えられないことをしてしまう。公務員だけでなく民間の会社の人もそうなんですが、そういうのはあるんですよ」
と、山口氏に近い見解を示した。
麻生氏「やめない」とする田崎氏、「やめる」と見たのは
今後は、真相の解明とともに財務省、そして政府への責任追及が課題となる。特に、当事者である財務省はもはやまな板の上の鯉だ。実業家の夏野剛氏は、
「財務省そのものの在り方、官僚制度そのもののあり方まで疑問が投げかけられる事態になっている」
「(かつての大蔵省からの金融庁分離、財務省への改組クラスの)大きな組織改編を検討せざるを得ないような状況に追い込まれていると思うんですね」(とくダネ!、フジテレビ系)
と省「解体」クラスの出直しを提唱した。政治アナリストの伊藤惇夫氏、元宮崎県知事の東国原英夫氏も、それぞれ同様の意見を述べる。
「財務省解体みたいな、財務省というスーパー官庁そのものの信頼感が完全に揺らいでいるわけですから。これは大問題だし、将来歴史の教科書に載るかなというくらい」(ひるおび!)
「財務省は存亡の危機だと思いますね。それくらいの覚悟をもって財務省は説明しないと、納税者の納得は得られません」(バイキング、フジテレビ系)
だが、事は財務省だけでは済みそうにない。住田裕子弁護士は、単なる書き換えの罪のみならず、「偽」の資料で国会議員の質問権を妨げたことは、「偽計業務妨害罪」に当たる疑いがあるとし、
「国会議員に託した国民の民意に対しても違反する行為だということで、単なる省の問題だけではなく、国会レベルの中で起きた、憲政史上の大きな問題だろうと思いますね」(モーニングショー)
と、さらなる追及を求める。
そうなれば焦点となるのは、麻生財務相の進退である。田崎氏は、現在の国会の勢力図などからは麻生氏をやめさせることは現実的には難しいとした上で、
「麻生さんの性格からして、叩かれれば叩かれるほど、意固地になって強くなるタイプなんですよ。(中略)どうも麻生さんはそういう(弱気になってやめるような)方ではない」
と、辞任の可能性は低い、と見たのに対し、共同通信編集委員の柿崎明二氏は、直近の発言などから、麻生氏が辞任を覚悟している、と読む。
「安倍総理がどう考えているか、あるいは周りがどう考えているかは別として、(まだ)決めてませんけど、ご本人の頭の中には『辞任』というのはあるんじゃないかと思います」(とくダネ!)
そして、最後の問題は安倍晋三首相だ。お笑い芸人のカンニング竹山氏は、説明責任を果たさなければ、麻生氏辞任でも国民が納得しないのでは、とも述べる。
「ここまで出ちゃうと、国民ももう黙っていられないというか、もうちゃんと説明しないと。(佐川氏の辞任では)終わらないと思いますね。安倍さんまでちゃんと説明しないと、麻生さんがまかり間違って辞任したところで終わらないと思うんですよ」(ビビット、TBS系)