「対話のための対話は意味がない」と繰り返してきた日本政府の対北朝鮮政策が、大きな転換点を迎えそうだ。北朝鮮との首脳会談に意欲を示す米国のトランプ大統領は2018年3月11日、安倍晋三首相が北朝鮮との会話(talk)に「非常に熱心(very enthusiastic)」だとツイートした。
安倍首相は3月9日のトランプ大統領との電話会談の直後に、北朝鮮が会談を申し出たことについて「この北朝鮮の変化を評価する」と発言。対話路線が加速する可能性もありそうだ。
「北朝鮮を含む世界にとって最高の取引をするかも」
トランプ氏は3月10日(米東部時間)にペンシルベニア州で行った演説で、仮に米朝首脳会談が実現した際の見通しについて
「さっさと席を立つかもしれないし、席について、北朝鮮を含む世界にとって最高の取引をするかもしれない」
と述べた。決裂と成功の可能性を並列した発言だが、ツイッターの書き込みは、
「北朝鮮は17年11月28日以降ミサイルの発射試験を行っておらず、会談の間は行わないと約束している。この約束を守ると信じている」
と、演説よりも楽観的だ。ツイートでは、3月9日の電話会談を念頭に、
「日本の安倍首相と話した。北朝鮮との会話(talk)に非常に熱心(very enthusiastic)だ」
とも言及した。
北朝鮮の会談申し出は「高度な圧力かけ続けてきた成果」
安倍首相は電話会談後のぶら下がり取材で、
「北朝鮮が非核化を前提に話し合いを始める、そう北朝鮮の側から申し出たこと、この北朝鮮の変化を評価する。これは、日本と米国がしっかりと連携しながら、さらには日米韓、国際社会と共に高度な圧力をかけ続けてきた成果であろうと思う」
と述べている。圧力の成果が出たため、対話を進める段階に移ったともとれる発言だ。安倍氏は拉致問題についても協力を要請し、トランプ氏は「安倍総理が言ったことは十分よく分かっている」と応じたという。
ただ、4月に予定されている日米首脳会談はハードなものになりそうだ。トランプ氏は安倍首相について触れたツイートの中で、
「米国との貿易をさらに良くするため、日本の市場開放についても議論した。現在1000億(10.7兆円)ドルの(対日)貿易赤字がある。公正でも持続可能でもない。すべて解決する!」
などと対日貿易赤字も問題視。米商務省が18年2月に発表した17年貿易統計によると、モノの取引に限った対日貿易赤字は668億ドル(7.1兆円)だった。対日赤字額の8割が自動車・自動車部品関連で占められており、米政権は日本の自動車貿易の非関税障壁に不満を持っている。日米首脳会談でこういった問題への対応を迫られるのは確実だ。そういった中でも安倍首相は安保・拉致問題について改めて協力を取りつけなければならず、厳しいやり取りも予想される。