財務省が森友学園をめぐる決裁文書を書き換えていたことを認める見通しになったことで、「書き換え」疑惑を最初に報じていた朝日新聞記事の信ぴょう性を疑問視していた識者らが、次々に方向転換をしている。
誤報の場合は「最初の謝罪が肝心」とまで述べていた前大阪市長の橋下徹氏は、「今回は朝日新聞は大金星だな」と評価を一転。その一方で、日本維新の会の足立康史衆院議員は、引き続き朝日新聞の「偏向報道」ぶりを非難している。
「車(財務省)をパトカー(朝日新聞)が無茶な追跡(偏向報道)」
朝日新聞は3月2日朝刊1面で「書き換え疑惑」を報道。この記事では「書き換え前」の文書を「確認」したとするだけで写真が載っていなかったため、信ぴょう性を疑問視する声が相次いでいた。3月8日に、朝日新聞が書き換えを指摘したのと別の文書に「特殊性」の文言があったことを毎日新聞が報じると、橋下氏は
「これまでの財務省の国会答弁のいい加減さは大問題になる」
とする一方で、
「書き換えがなかったのなら朝日新聞は早急に誤報を認めるべき。最初の謝罪が肝心」
などと誤報の可能性を指摘していた。ところが、書き換えを認める方針が報じられた3月10日夜には、
「俺も政治家のときにはメディアと散々喧嘩をやったけど、やっぱり民主国家においてはメディアは重要だ。しかもきっちりと調査できるメディアがね。野党は全く力不足。今回は朝日新聞は大金星だな」
などと「宿敵」朝日新聞を持ち上げた。このツイートに日本維新の会の足立康史衆院議員が返信。財務省については
「もちろん、国家権力たるもの、朝日新聞に追及されたからといって、公文書を改ざんするなど絶対に認められない」
と非難する一方で、引き続き朝日新聞を「偏向報道」だと非難した。
「今回の事案は、車(財務省)をパトカー(朝日新聞)が無茶な追跡(偏向報道)をして、車(財務省)が事故を起こした(公文書を改ざんした)ようなもの」
自民党の和田政宗参院議員は3月8日、朝日新聞が文書を取り違えて比較していた可能性を指摘。
「朝日新聞さん、指摘する文書の件、まさかとは思いますが全く別の決裁文書の調書を比較し、文言が変わっていると指摘ということはないでしょうか?」
ブログにも画像付きで同様の主張を展開した。財務省が「書き換え」を認める方針は10日18時30分頃に報じられたが、和田氏はその5時間前の13時38分、
「まずこう言うと私のアンチの人は喜ぶかもしれないが、財務省が『書き換えた』可能性と『書き換えていない』可能性は半々と、私は報道当初から見てきた」
と説明した。
「捏造報道かと思ったけど朝日新聞よくやった」
経済評論家の上念司氏は、3月5日夕方に
「朝日新聞は決裁文書が改ざん報道で逆に大ピンチに陥っているんだね。明日の財務省の発表次第では社長のクビが飛ぶぐらいじゃ済まないかも」
と、朝日「大ビンチ」説をツイートしていたが、3月10日夜には
「諦めかけてた消費税増税凍結に薄日が差してた!!捏造報道かと思ったけど朝日新聞よくやった。これで増税止めたらファンタジスタ!むしろそっちの方がメリット大」
と一転。アゴラ研究所所長の池田信夫氏は3月9日にウェブサイト「アゴラ」で、朝日が「確認」した文書は
「売買契約のドラフト(決裁前の未定稿)だと思われる」
「これは大阪地検に任意提出した売買契約の決裁文書とも違うはずなので、情報源は検察ではありえない(検察に出したのは国会に出したのと同じだろう)」
などと推測していた。NHKが3月11日に
「国会に提出された決裁文書とは一部内容が異なる文書を検察側が保管している」
と報じたことで、池田氏も同日午前、推測が「誤りだった」として、
「検察と違うバージョンを国会に出したら、それを見た検察がすぐ気づいて公文書偽造の動かぬ証拠になる。まさか近畿財務局がそんな単純な偽造をするはずがない――というのが私の常識的な見立てだったが、常識外のことが起こったようだ」
と軌道修正。朝日新聞の情報源は検察だとの見方を示した。