外国企業が中国でやらかす「間違い」 地名・地図という「レッドライン」

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   広告でダライ・ラマの発言を引用したことに対し、中国で強烈な批判が殺到したことで、ドイツのダイムラー社は2018年2月6日、公式に謝罪した。

   これは、メルセデス・ベンツのインスタグラムアカウントに、ビーチに停められた白いベンツの画像が貼られ、そこにダライ・ラマの「状況をあらゆる角度から見れば、より開放的になれる」という言葉が引用されていたというものだ。

   それを見た中国のネットユーザーは厳しく批判した。ネットユーザーの多くが「ダライ・ラマはチベットを中国から分裂させようとしている許されざる者」と考えているからで、抗議者たちはメルセデス・ベンツ社の車両不買を訴えた。

香港、台湾、チベット...

   外国企業は中国で似たような「間違い」(彼らは内心そのように認めたくないかもしれないが)をよく犯す。

   2018年1月には、アメリカのホテルチェーン、マリオットが会員向けのメールでの「どの国に住んでいるか」という質問の選択肢に、「中国」と「香港」「マカオ」「台湾」「チベット」を並列していたことが中国人会員に通報され、中国のネットユーザーから激しく非難を浴びた。

   アメリカのデルタ航空とスペインの衣料品メーカーZARAは、同じようにホームページで台湾とチベットを「国家」として扱っていたことで、中国のネットユーザーの激しい非難を浴びた。

   日系企業数社も例外ではない。無印良品の重慶店舗が贈呈しているカタログに添付された地図に、釣魚島(日本では尖閣諸島)を含む中国の島嶼が記載されておらず、中国の国家測量地理情報局から通達を受け、訂正を命じられた。また、京セラの中国語公式ホームページにある中国業務拠点地図において、チベット自治区、新疆ウイグル自治区や台湾地区などが入っていないことが明らかになった。無論、2社は速やかに謝罪声明を発表した。

   『ニューヨーク・タイムズ』は今回のダイムラーの反応について、「あらゆる軽率な出来事に対して極めて敏感な中国という市場において外国企業が商売をする上で、直面するリスクを浮き彫りにした」と評した。「あらゆる軽率な出来事に対して極めて敏感な」という表現は非常に的を射ている。

中国特有の「職業的な条件反射」

   中国にいるこうした外国企業は、中国政府と民衆の「アレルギー源」をまさか知らなかったのだろうか。それは、ほとんど有り得ないことだ。上に挙げた外国企業数社は中国で30年以上、少なくとも十数年間は営業実績があり、中国の国情について無知というレベルではなかった。彼らが故意に中国政府と民衆の気分を害そうとしたのでなければ、全く理解しがたいことである。なぜ、いつもこのような間違いを犯すのだろうか?

   この問題を、ある程度のキャリアを有する中国メディアの編集者のところに持っていくと、間違いなく一笑に付されるだろう。「答えは簡単だ。外国企業には『職業的な条件反射』がないのだから」

   中国のメディアにおいて経験豊富な編集者は、若い記者の原稿の中に「中国、香港」という言葉を見かければ即座に「中国内地、香港地区」に修正し、「中国、台湾」という言葉を見かければ直ちに「中国大陸、台湾地区」に修正する。地図に至っては、西沙諸島、南沙諸島、釣魚島など、いくつかの黒い点であろうともスペースやページ数削減という理由で省略することは絶対に有り得ない。これらはみな「政治的なレッドライン」であり、ここで生じる間違いは即ち「政治的な間違い」であり、執筆記者も責任編集者も、ひいては新聞の編集長もみな厳重な処分を受けることになる。

   実際、どのような用語が「正確」で「標準的」なのか、どのような用語が「間違い」で「標準的ではない」かについては新華社が毎年目録を更新し、全国の各メディアに配布して、その通りに行うことを求める。日常業務の中で、編集者も記者も常にこの方面の専門的な訓練を受け、いつしか「職業的な条件反射」を確立するのだ。

「政治/文化安全審査メカニズム」

   この「条件反射」とは比喩ではなく、本当に本能的反応の一種だ。メディア関係者が「職業病」だと自嘲する様子も常に見かける。街で文字を目にすると、いつも知らず知らずのうちにその「標準的ではない」箇所を取り除きたくなるのだと言う。

   条件反射は、複数回の繰り返された刺激と反応の過程で構築される。しかし、中国にある海外企業に複数回も繰り返されるこのような機会が果たしてあるだろうか。ダイムラーが引用したダライ・ラマの政治とは無関係な発言や、無印良品のカタログに付いていた中国の地図は、スタッフもそこにどんな政治的なリスクが隠れているのかなど想像できないだろう。外国企業のスタッフ全員に、中国メディアのベテラン編集者並みの職業技能を要求するのは確かに少し無理な話だ。

   もちろん、この問題も全く打つ手がないわけではない。いくつかの外資系企業が専任職を設置したり、外部への依頼という形で「政治/文化安全審査メカニズム」を作ったりして、対外的な情報を公表する前に審査させている。審査とは、中国メディアの編集者が「基準」を保証するために行う仕事である。

   こうした対応に対しは憤ることもできるし、滑稽だと笑うこともできる。ただ、実際に中国でビジネスをするなら、中国に特有の「条件的反射」、あるいは中国の常識とは何か、少し心得ていたほうがいいことは確かだ。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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