ヤフーの株価が冴えない。2018年2月28日には一時前日終値比9.6%急落して483円と約8か月ぶりの安値をつけ、その後も500~510円前後で推移している。大株主の米ファンド「アルタバ」(旧米ヤフー)が日本のヤフー株の売却方針を発表したことが需給悪化懸念を生じ、売り材料になった。ヤフーの業績は、ネット通販部門がやや苦しいことから増収減益になっており、そんな地合いの悪さも重なった。ただ、アルタバによる株売却をこなせば、株価も立ち直るとの見方が出ている。
米メディアによると、アルタバのトーマス・マキナニー最高経営責任者(CEO)が2月27日の電話による記者会見で、日本のヤフー株を4月以降に売却する方針を表明した。アルタバはヤフー株の35~36%程度を保有しているとみられる。売却の理由は「現金を得たい」と述べたとされるが、なぜ今なのかなど、はっきりしないことが多い。売却先もはっきりせず、市場で断続的に売ることも想定されている。
「自社株買い」の選択肢
日本のヤフーは、ソフトバンクグループが43%を保有する親会社だ。アルタバと合わせて8割近くを固定的な大株主が保有するため、流動性が低いのが特徴でもあったが、アルタバ保有株が市場で売りに出されるとなれば、需給が緩んで株価下落を呼びかねないことが、先回りした売りを呼んだ格好だ。ソフトバンクはアルタバとの間で、アルタバ保有のヤフー株が丸ごとライバル企業に売られることを避けるため、売却前に協議する契約を結んでいるとされる。そのことが、アルタバが保有株を市場で売ることになるとの見方の背景にもなっている。
株価が不安定になることは、ヤフーあるいはソフトバンクとしても望むところではない。そこでヤフーが「自社株買い」としてアルタバから買い取る選択肢があり、これを有力視する市場関係者もいる。ヤフーは手持ち資金も潤沢で財務体質も磐石なだけに、可能性は低くない。自社株買いでアルタバの売却を乗り切れば、資本関係は安定し需給も引き締まりそうだ。
ネット企業の草分けである米ヤフーは、会社組織が整えられた1995年に事業を本格スタート。早くも96年に当時のソフトバンクと共同で日本のヤフーの会社組織が誕生し、検索などのサービスを提供する「ヤフージャパン」が始まった。以来、日米のみならず世界中で人々がインターネットを利用する際に最初に訪れる「ポータルサイト」として広く認知され、広告収入などを得ることで成長してきた。
ネット通販部門の巻き返しに期待
日本のヤフーは順調に事業を展開し、2010年代にパソコンからスマートフォンに個人の主要端末が移行する動きにも何とか遅れをとらずに対応した。しかし、米国ではグーグルやフェイスブックなどとの競争に敗れ、経営が悪化。17年6月には、米通信大手のベライゾン・コミュニケーションズが米ヤフーのネット関連の中核事業の買収を完了し、これにあわせて米ヤフーが社名を「アルタバ」に変更。インターネット勃興期を支えた米ヤフーは20年余りにわたる歴史に幕を閉じ、米ヤフー晩年に著名な女性経営者だったマリッサ・メイヤー氏はCEOを退任した。アルタバは、自らは事業を展開せず、中国のアリババ集団や日本のヤフーの株式などを管理する投資ファンドとなった。
日本のヤフーは広告事業では堅調に利益を上げているが、ネット通販などはアマゾンや楽天の後塵を拝し、全社では減益。2017年4~12月期連結決算で売上高は前年同期比4.4%増の6587億円だが、営業利益は2.9%減の1478億円にとどまる。この微妙な業績も投資家心理をやや不安にさせており、ネット通販部門の巻き返しに期待がかかる。