米国のトランプ大統領と北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩委員長が、近く初の首脳会談に臨む見通しになった。2018年3月8日夜(米東部時間、日本時間9日午前)、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使とした北朝鮮を訪問した鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が、トランプ氏との会談後に記者会見して発表した。
韓国側が米側に伝えたところによると、北朝鮮は「非核化」の意思を示したといい、米側も歓迎。ただし、何をもって「非核化」と呼ぶかは北朝鮮と日米韓の間ではもちろん、日米韓の中でも一致していない可能性もあり、3か国の結束が試されそうだ。
北朝鮮の動きは「これまでの制裁や圧力の成果」
トランプ氏は安倍晋三首相と電話会談し、韓国側から説明を受けた内容を伝えた。菅義偉官房長官によると、韓国が米国側に伝えた北朝鮮の意向は(1)金正恩委員長が非核化にコミットしたこと(2)米国との間での平和を望んでいること(3)金正恩氏自身がトランプ大統領との対話を望んでいること、といった内容。トランプ氏は北朝鮮側の意向について
「北朝鮮の動きは、これまでの厳しい制裁や、米国の軍事力を含む最大限の圧力の結果が出てきた成果である」
「今後、状況を注視しつつ、自分としても金正恩委員長と会う用意がある」
などと評価したという。
米国側は「制裁は継続」が前提だが、基本的には歓迎姿勢だ。ホワイトハウスのサンダース報道官は、
「トランプ大統領は、金正恩氏との会談の申し入れを受け入れ、時間と場所は今後決定する。北朝鮮の非核化に期待している。その間、すべての制裁と最大限の圧力は継続しなければならない」
とツイートしたのに続いてトランプ氏も直後に、
「この間(対話をしている間)は北朝鮮によるミサイル発射はない。大きな進歩だが合意までは制裁は続ける。会談を計画中だ」
と続けた。
「『検証可能で不可逆的な非核化』よりも少ない内容を受け入れてしまう現実的な懸念」
ただ、「非核化」をめぐる認識の不一致を危ぶむ声も出ている。安倍首相はトランプ氏と電話会談後のぶら下がり取材で、
「核・ミサイルの完全検証可能かつ不可逆的な形での放棄に向けて、北朝鮮が具体的な行動を取るまで最大限の圧力をかけていく。この日米の確固たる立場は決して揺らぐことはない」
と発言。日本としては「核・ミサイルの完全検証可能かつ不可逆的な形での放棄」を「非核化」と停止していると読めるが、ニューヨーク・タイムズ紙は、
「交渉役の大統領が金氏と1対1で話して、『検証可能で不可逆的な非核化』よりも少ない内容を受け入れてしまう現実的な懸念があると思う」
とする日本アナリストの指摘を紹介。同様の懸念は韓国側にもあるようで、鳩山由紀夫元首相は李洛淵(イ・ナギョン)首相と会談した際に「北朝鮮との合意について詳しく伺った」として、米朝で「非核化」の意味が違う可能性について、
「何をもって体制の安全が保証されるかで、判断が分かれる可能性があると総理は話された」
と、ツイッターで明かした。