店を貸し切りにして待った予約客40人は、別の店でご機嫌だった
宴会当日の5月4日午後5時、Bさんに「今日の宴会は何名か」と確認の電話を入れると、「あとでかけます」。ところが電話がこないばかりか、夜8時を過ぎても誰も来ない。Bさんに電話してもつながらない。何度メールしても返信がこない。夜10時過ぎ、「警察や弁護士に相談する」というメールを送ると、Bさんから電話がかかってきた。Aさんはこう語る。
「電話の向こうは別の会場の宴会で騒がしく、本人もかなり出来あがって、ご機嫌の様子でした。なぜ連絡をくれないのかと聞くと、『携帯を落とした』というばかりで、らちがあきませんでした」
Aさんは石崎弁護士と相談、石崎弁護士がBさんに電話で損害を補償するよう要求すると、「私は単なる宴会予約の窓口。担当者から電話させます」。
しかし、担当者からの電話はなく、Bさんの電話もつながらなくなった。石崎弁護士は携帯番号からBさんの住所を割り出した。弁護士会照会という弁護士法に認められた権限を使い、携帯電話会社に個人情報を開示させたのだ。
そして、Bさんの住所に40人分の料理コース費用計13万9200円の損害賠償の要求を内容証明で送ったが、受領されないまま戻ってくる始末だった。そこで訴訟を起こして勝ったわけだが、裁判の場にも出てこない相手にどう損害を支払わせるのか石崎弁護士はこう語る。
「非常に残念です。飲食店のドタキャンについては、様々な法律問題があるので、裁判の場できちんと争って、裁判所に判断してもらいたかった。もしBさんが判決に従わないと、裁判所が強制執行することになりますが、現実には裁判所はBさんの銀行口座がどこにあり、いくらあるかまでは調べてくれない。こちらで調べるしかありませんが、それには興信所に頼むことになる。13万円を取るために10万円を興信所に払うのか、そこまで意地悪になるのか、悩ましい問題です」と苦笑いした。