自民党の憲法改正推進本部(細田博之本部長)は2018年2月7日に開いた会合で、大規模災害などに対応するために国民の私権を制限することも含む条文案について協議し、本部長に一任された。
緊急事態条項は、一時的に政府に権限が集中することで災害に迅速に対応できるようになるとの見方がある。反面、財産権をはじめとする私権が制限されることへの警戒感はきわめて高い。普段は与党を支持する声が多く、右寄りと評されることもあるヤフーのコメント欄ですら批判的な声が多く、「ドン引き」と言ってよい状態だ。連立を組む公明党は緊急事態条項に否定的だ。
2012年の改憲草案に盛り込まれる
緊急事態条項は、自民党が野党時代の12年に制定した改憲草案に盛り込まれている。それによると、緊急事態を宣言した際は、国会の事後承認を前提に、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を決められたり、首相が必要な財政支出ができるようになったりすることをうたっているほか、
「国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」
「衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる」
などと定めている。大規模災害で多くの建物が倒壊したりした場合、その持ち主が分からなくても迅速に撤去できるようにすることを念頭に置いている。
党内でも、緊急事態条項の内容には紆余曲折があった。憲法改正推進本部は17年12月、改憲4項目について「論点とりまとめ」を公表。
それによると、緊急事態条項については、これまでに出た意見として、
(1)選挙ができない事態に備え、『国会議員の任期延長や選挙期日の特例等を憲法に規定すべき』との意見
(2)諸外国の憲法に見られるように、『政府の権限集中や私権制限を含めて緊急事態条項を憲法に規定すべき』との意見、
の2つが併記された。
執行部としては、(2)は公明党や野党の理解が得られにくいとして国会議員の延長のみを条文案に盛り込んで意見集約する考えだったが、1月31日の推進本部の会合では、石破茂元防衛相や山谷えり子元拉致問題担当相らが、12年の草案を念頭に、私権制限についても議論すべきだと異論を唱えていた。