自動車新時代のビジネスチャンス 三菱商事が打った一手

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   三菱商事が、三菱自動車工業株式に対するTOB(株式公開買い付け)を実施し、出資比率を現行の1割弱から2割に高める。2018年2月20日、発表した。三菱重工業と三菱東京UFJ銀行が応じる。単なる三菱グループ「御三家」内の資本移動だが、「自動車関連産業で稼ぐ」という商事の意思が、より明確になったと言えそうだ。

   自工は1970年に重工の一部門が分離して設立された。79年に年間生産台数100万台を突破し、88年には東証1部に上場。徐々に独り立ちしていく。

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三自の経営危機を救った3社

   ところが2000年代にリコール(回収・無償修理)隠しが相次いで発覚。経営危機に陥った自工を、優先株の引き受けという形で救ったのが、重工、商事、銀行の三菱3社だった。

   最も深く関与したのが、もともとの母体である重工だ。西岡喬・重工会長(当時)が2005年、自工の会長に就任。持ち分法適用会社にして、重工と自工との一体感をアピールした。この時期、品質担当の副社長や購買担当の常務も、重工が送り込んだ。

   3社の支援で自工は立ち直り、2014年には商事出身の益子修氏に代わって、自工生え抜きの相川哲郎氏が社長に就くまでになった。

   ところが2016年に、再び新たな不正が発覚する。燃費不正問題だ。結局、日産自動車からの出資を受け入れ、日産傘下に収まることで生き残りを図ることになった。

   現在の出資比率は日産34%▽2位の重工が10%弱(重工傘下の匿名組合も含む)▽3位の商事が9%強▽4位の銀行が3%強――という構成で、三菱3社の地位は相対的に低下した。

   それでも、3社計で20%以上。三菱グループというだけで無為に保有し続けるだけでは、自分の株主に説明できない。ということで、三菱3社は自工出資のあり方について、2017年6月から協議を開始していた。

出資割合を引き上げ

   重工と自工は、元は「親子関係」とはいえ、法人向けが多い重工と、一般消費者を対象とする自工とではビジネス上の相乗効果は薄かった。とくに重工は国産旅客機MRJなど他の重点分野に注力する必要があった。銀行も株式の持ち合い解消を進めており、最終的に商事の割合を高めることで一致した。重工は1.45%、銀行は1%分の保有を続ける。

   商事はこれまでも、東南アジアやロシアなどで自工と共同で自動車販売などを幅広く展開し、接点は広い。しかし現状の出資比率では、どんなに利益を上げても得られるのは配当収入のみだった。今回、商事は約1200億円を投じて出資比率を引き上げ、自工を持ち分法適用会社化して、自工の利益の一部を取り込む。

   自動車産業は今、100年に一度の変革期にあるといわれる。すなわち電動化や自動運転やライドシェアといった新潮流だ。輸出入や海外での販路開拓といった従来型の商社ビジネスには収まらない、大きなビジネスチャンスが広がっている。

   だが自動車メーカー、IT企業を交えた激しい競争になっており、リスクも大きい。自動車の新時代に果実を得られるのか、総合商社の雄、三菱商事の真の実力が問われそうだ。

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