「おそらく羽生選手の頭の中には跳んでいる姿ができあがっている」
佐野氏は「回転スピードを上げるには(体全体の)『軸を細くする』のが大命題。五輪選手でも、空中にあがる力がないと、ものすごく綺麗に脇を締めます。しかし羽生選手はこれだけ開いても3回転アクセルを楽々回っています」と、他の五輪選手と比較。4回転アクセル成功の可能性について、「脇をきゅっと締めて回転スピードをあげれば、あと1回転(できる)。おそらく羽生選手の頭の中には自分が(4回転アクセルを)跳んでいる姿ができあがっているんじゃないかな。1年かからないのではないかと、結構僕は楽観視しています」との見立てを示した。
「余裕」は点数にも表れていた。平昌のショートプログラムでは出場30選手の大半がトリプルアクセルを跳んでいるが、出来栄え点(GOE)で満点の「3.0点」を獲得したのは羽生選手と閻涵(えん・かん)選手の2人だけ。基礎点が1.1倍に増える演技後半に組み込んでの3.0点は羽生選手だけだった。
羽生選手が跳ぶアクセルジャンプの特徴はこの「肘」だけではない。佐野氏は2月19日の「ひるおび!」(TBS系)出演時も他選手との違いを語っていた。一般的に、左足で踏み切る場合、助走は「右足」で後ろ向きに滑り、前向きになるときに左足に乗り換える。一方で羽生選手は、「左足」で助走をつけ、カウンター(ターンの一種)を挟んで、そのまま左足で跳ぶ。佐野氏は「ずっと左足のまま後ろから前に向かないといけないので、ターン自体がすごく難しい。技術がないとステップだけで転んでしまい、アクセルジャンプまでいきません」と難度の高さを分析していた。
羽生選手は五輪2連覇後、「モチベーションは4回転アクセルだけ」と言うほどのこだわりを見せている。2月27日に外国特派員協会で会見した際も「初めの人にはなれなくても、自分の『夢』である4回転アクセルをなんとか成功させたいなという気持ちでいます」とあくなき挑戦心を明かしていた。