岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 銃規制支持は「社会主義者」という感覚

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「交通事故を理由に車を取り上げられることはない」

   私は1992年、ルイジアナ州バトンルージュの高校に留学していた服部剛丈君に起きた事件について、クリスに話した。早めのハロウィーンパーティの夜、訪問する予定の家と間違えて、別の家の敷地に足を踏み入れ、服部君は射殺された。

   その話を聞きながらクリスは顔を曇らせ、「何て悲しいことだ(That is so sad.)」 と三度、繰り返した。

「悲しいことに事故は起きる。ただそれは、交通事故も同じだ。でも、だからといって車を取り上げられることはない。この国は銃が溢れている(個人所持の銃は約2億7千万丁)。仮にそれがすべて取り上げられたとしても、闇で銃を簡単に手に入れることができる。シカゴやニューヨークは銃規制がとても厳しいが、銃撃はあちこちで起きている。銃はどこからでも流れてくるんだ」

   そして、クリスが唐突に言った。「ほかにも素晴らしい銃があるけれど、見たいかい?」

   「怖いけど、見たいわ」と答えると、私を2階に案内し、大切そうにライフルとショットガンを、ひとつずつ差し出した。私はショットガンを手に取ってみたが、持ち続けていられないほど、ずっしりと重たかった。家にあるのは、どれもアサルト銃ではない。

   手入れされ、銃は輝いて見えた。クリスは銃が好きなんだ、と思った。

   何か言わなければ、と思い、「美しいわ(It's beautiful.) 」とつぶやきながら、違和感を覚えた。

   「私は合衆国憲法修正第2条を支持している」とクリスは言った。そこには、「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない」と書かれている。

   アメリカは理不尽ともいえるイギリスの課税政策に反発し、一般市民が銃を手に戦争で独立を勝ち取った国だ。しかし、「今、このアメリカで、自由な国家の安全のために、武器を保有し、携帯する必要性を感じるのですか」と尋ねると、クリスはためらうことなく「イエス」と答えた。

「この国が、社会主義国になってはならない」
「アメリカが社会主義国になるかもしれない、と本気で恐れているのですか」
「そうだ。現にリベラル派は、社会主義的な思想を支持している。政府にすべて面倒を見てほしいと思っている人たちがいる。そんなことになったら、働きもしない者のために、私の子供や孫達がもっと働かされ、もっと税金を払わなければならなくなる。専制国家になる可能性だって考えられる。FBIや軍隊が理由もなく、家に押し入ってくるような国にならないとも限らない。でも、そうはならない。私たちが皆、銃を持っているからだ。政府は大きくなってはいけないんだ」
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