委任状争奪戦を展開する可能性
経営参加のチャンスがあれば買収にも打って出るし、それがかなわなければ、できるだけ高値で保有株を手放すのがアイカーン氏の流儀。2013年、アップル株を買い集めた上で自社株買いを要求し、一定程度応じさせた。15年にはブリヂストンよる米タイヤ販売大手ペップ・ボーイズの買収に異を唱え、買収金額の引き上げの末、競り勝ち、ブリヂストンに煮え湯を飲ませている。アイカーン氏はゼロックスに対しても、これまでも再三、経営の立て直しを強く求めていた。
今回のアイカーン氏らの富士フHDによる買収反対の書簡に対し、ゼロックスも書簡を発表し、何か月もかけて複数の案を検討した結果、富士フHD傘下に入るのが「株主への価値創出に最良の道」だとの結論に至ったと説明している。
今後の展開はどうなるか。
はっきりしているのは、ゼロックスの株主総会で、買収の承認を得る必要があること。これに向け、最終的にゼロックス経営陣とアイカーン氏らが委任状争奪戦を展開する可能性もある。
そんな中、アイカーン氏は買収反対を訴える一方で、保有株の一部を売却したとの報道もある。買収発表で株価が上がったところで利益確定を図ったとの見方、また、買い戻して委任状争奪戦に備えるのではとの見方などが交錯する。
富士フHD側にすると、買収にキャッシュは出ないとはいえ、事務機器業界の先細り予想の中で、多額の負債を抱え、足元の業績も芳しくないゼロックスに6700億円を投じるのは「割高」との指摘も少なくない。今後の成長分野と位置付ける医薬品事業などに投じる資金が必要なだけに、アイカーン氏らがより多くの還元を求めるといった「条件闘争」に出ても、おいそれと譲歩はしにくいとの見方が多い。
他方、アイカーン氏らにしても、高い要求をし過ぎると、富士フHDの買収自体が頓挫するリスクもある。これに代わる経営立て直しの妙策が簡単に見つかる保証はない。
こうした状況を反映してか、今のところ、他の投資家からは富士フHDによる買収計画、アイカーン氏らの反対行動に、目立った反応が出ていない。状況を見極めようということだろう。これからアイカーン氏らがどんな手を繰り出してくるか、注目される。