日本を代表する「カリスマ創業者」の一人、日本電産の永守重信会長兼社長(73)がついに社長職を譲る。託したのは3年ほど前に入社したばかりの吉本浩之副社長(50)。2017年度に1.5兆円弱を見込む連結売上高を、20年度に2兆円、30年度に10兆円に伸ばすという大目標を掲げる永守氏。吉本氏が思いを共有して実行できるのか、その手腕が問われそうだ。
永守氏と吉本氏は2018年2月15日、京都市内でそろって記者会見し、1973年の同社設立から初の社長交代を発表した。永守氏は吉本氏について「若く意欲的なプロ経営者。自分の50歳のときよりも高度で良い仕事をしている」とべた褒めし、吉本氏は「これまでの路線は全く変えない。世界中から尊敬される会社の礎を作りたい」と永守路線の継承を宣言した。6月20日付で正式に交代する。
子会社の業績を1年で急回復
吉本氏は1991年に大阪大学人間科学部を卒業後、総合商社の日商岩井(現双日)に入社。自動車畑を歩み、2008年に自動車部品大手カルソニックカンセイに転職。12年に日産自動車に移ってタイの現地法人社長などを歴任し、15年3月に日本電産入りした。子会社で実績を積み、16年11月に副社長に就任していた。
評価されたのは、企業再建の手腕だ。子会社である日本電産トーソクの業績を1年で急回復させ、その後も、停滞していた車載事業本部の成長を加速させた。「再建の手法とスピード感は私に近い」と永守氏に言わしめるほどだ。一方の吉本氏は「現場に入り込んで同じ目線で再建ビジョンを作り、問題のある事業を立て直すことがライフワーク」と自信を見せる。
日本電産は1973年、28歳の永守氏が設立。自身を含め社員4人、プレハブ小屋からのスタートだった。「世界一になる」を合い言葉に、HDD用など精密小型モーターの開発、販売に明け暮れた。1988年に大証2部、98年に東証1部に上場した。