検査不正は「面倒くさいから」? 記者質問に宇部興産は...

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   2017年秋に発覚した神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レなどに続き、大手化学メーカーの宇部興産が18年2月23日、品質検査データ改ざんなどの不正があったと緊急記者会見で発表した。

   宇部興産と丸善石油化学が折半出資する宇部丸善ポリエチレンが販売した電線や通信ケーブルの被覆材料(ポリエチレン製品)で、必要な検査75項目のうち、強度や伸び率など16項目の検査を1990年代から行っていなかったという。

  • 検査不正は「面倒くさいから」?(画像は公式サイトから)
    検査不正は「面倒くさいから」?(画像は公式サイトから)
  • 検査不正は「面倒くさいから」?(画像は公式サイトから)

公表タイミングが遅れる

   生産は宇部興産の千葉石油化学工場(千葉県市原市)が請け負っており、今回の不正に丸善石油化学は関係ないという。16項目の検査については「過去の実績値を基にした数字を書き込んでいた」という。「検査を一切していないわけではないが、他の試験項目から、その試験項目が品質規格内にあると説明できるということで、検査をしていなかった」という。

   宇部興産は安全性など「製品の品質に問題はないと考えている」と説明しているが、納入先と取り決めた検査を長期にわたって怠っていただけでなく、不正を公表するタイミングが他社に比べて遅れたことが問題となった。

   宇部興産が社内調査で不正を発見したのが2017年12月11日。ところが、納入先への説明を優先し、公表を2か月以上も先延ばしにしてきた。宇部興産の山本謙社長は、今回の23日の記者会見で、「品質確認を第一に、お客様への説明を最優先に考えた。品質に問題ないと確認してから公表した」と理解を求めた。宇部興産は不正があった製品を出荷した33企業グループ(50社)の全社に連絡し、7割の企業に説明を終えた段階で公表に踏み切ったと説明している。

   しかし、2017年8月末に経営陣が不正を把握した神戸製鋼は、納入先への説明を始めた直後の10月8日に記者会見し、事実を公表している。

「品質に対する内部統制の脆弱性がある」

   また、宇部興産が加盟する経団連は昨17年12月4日、1500の会員企業・団体に自主的な調査を1月末をめどに行うよう呼びかけた。その結果、旭硝子子会社のAGCテクノグラス、コスモエネルギーホールディングス子会社の丸善石油化学など5社で新たな不正が見つかり、各社が2月2日までに公表。製造業を中心に大手企業が加盟する経団連としては、素材メーカーで相次ぐ不正に自主調査で一区切りつけ、信頼回復を図るのが目的だった。ところが宇部興産の新たな不正の発覚で、経済界全体の信頼回復がまたひとつ遠のく格好となった。

   記者会見で山本社長は「経団連の要請は承知しているが、私どもとしては品質第一、お客様優先ということで対処した。やるべきことはやったという認識だ」と釈明したが、他社に比べ情報公開のタイミングが遅れたのは否めない。

   問題となった電線や通信ケーブルの被覆材で、強度や伸び率など必要な検査を1990年代から行わず、過去のデータを流用していた理由も、記者会見で明らかとなった。納期が迫っていたなどの理由は見当たらず、「検査が面倒くさいから、漫然と過去の数字を書き込んでいたのでは?」との全国紙記者の質問に、杉山秀幸専務は「そうですね。そう考えられる」と認めざるを得なかった。山本社長も「品質に対する内部統制の脆弱性がある。身を正して倫理観を遵守させていかなければならない」と陳謝した。

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