ソフトバンク親子上場の方針 「NTTとドコモ」より「懸念の声多い」理由

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   ソフトバンクグループ(SBG)が、携帯電話事業を手掛ける子会社ソフトバンク(SB)を東京証券取引所第1部に上場させる方針を打ち出した。実現すれば、グループ全体の資金調達を多様化させられる一方、親会社の意向で子会社の経営が左右されれば子会社の少数株主の利益が損なわれるとの懸念もある。

   孫正義・会長兼社長は2018年2月6日、東京都内で開いた17年4~12月期決算の記者会見で、上場時期について「1年以内に行いたい」と語った。同時に、「上場しない可能性もある」とも述べ、上場審査の状況などによって見送る可能性があることも明らかにした。

  • どうなるSBの親子上場(写真はSBサイトより)
    どうなるSBの親子上場(写真はSBサイトより)
  • どうなるSBの親子上場(写真はSBサイトより)

「役割と価値を明確に分ける」

   売り出すのはSBGが保有するSB株の3割程度、資金調達額は約2兆円に上るとみられる。孫社長はその使途について「財務バランスの強化とグループのさらなる成長のために使う」と述べた。現在は社債や借り入れに頼っていて、相次ぐ巨額買収や投資で有利子負債は14兆円に膨らみ、低金利の下でも利払い費は年4600億円(2017年3月期)に達し、今後は金利上昇が予想される。SB上場で株式市場からの調達の選択肢が広がることは、財務基盤の安定に寄与するのは間違いない。併せて、調達資金を人工知能(AI)やスマートロボットなど国内外のベンチャー企業への投資拡大を含む成長戦略に振り向けるのも、当然の狙いだ。

   孫社長が「グローバルな規模で(ベンチャーなどへの)投資を進める戦略的持ち株会社のSBGと、国内通信事業を担うSBの役割と価値を明確に分ける」と語るように、SB上場には、グループ内の役割分担を明確にするという狙いもある。

   SBGは、2017年にサウジアラビアなどと10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」を立ち上げるなど、ここ数年、世界の成長企業を発掘する投資会社としての性格を強めている。主力事業であるSBを上場させ経営の自立性をある程度高めることでSBが迅速に経営判断することを可能にし、携帯事業自体を自律的に成長させたいということだ。これにより、傘下に米携帯大手のスプリント、英半導体設計のアーム・ホールディングスなど世界の企業と同列にSBもぶら下がり、「SBGは世界の戦略持ち株会社になる」(孫社長)。

   ただ、親会社のSBGがすでに上場しており、子会社のSBも上場する「親子上場」については、親会社の意向で子会社の経営が左右され、子会社の少数株主の利益が損なわれる懸念が指摘される。

株主間の利益相反

   一般に親子上場では、子会社の取締役会は、親会社との取引よりも有利な取引機会があればそちらを選択すべきだが、親会社に有利な取引条件を飲んでしまうということが懸念される。SBGの場合、多額の有利子負債を抱え、主力の携帯事業で利益をあげるSBからの「あがり」が頼り。SBGが目先の利益がほしくて携帯事業で得た金を配当などで吸い上げ過ぎると、SBの成長にマイナスになり、SBの少数株主の利益に反する事態もあり得る。

   同じような親子上場はNTTとNTTドコモにも当てはまる。ただ、SBGが孫社長の強力なリーダーシップのもとで、世界的に幅広く投資していることから、基本的に通信事業の枠内での親子上場とは趣が異なり、親子の株主間の利益相反を懸念する声は、はるかに多い。まして、最近は、子会社の少数株主への配当でかえって外部への資金流出になるとか、迅速な意思決定にマイナスなどの理由で親子上場を解消する方向が強い。

   孫社長は「SBは今も自律的な経営をしており、(双方の)利害が対立することはない」と強調するが、あえて親子上場を目指す以上、メリット、デメリットをどう考えるかを含め、投資家、審査する東証の理解を得るため、丁寧な説明が必要になる。

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